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天狐あやかし秘譚
第108章 匿影蔵形(とくえいぞうけい)
☆☆☆
次の日、西園寺は再び大武エレクトロンを訪れていた。

入り口の守衛に借り物の警察手帳を見せ、エントランスに入る。エントランスでは昨日、西園寺が聴取をした人のひとりである、吾嬬が出迎えてくれた。

吾嬬は秘書らしい端正なスーツを身にまとっているにも関わらず、顔立ちがどこかホワンとしてて可愛らしかった。少しライトブラウンに染めた髪にふわりとしたパーマをあてているところや、大ぶりの丸い縁のメガネをかけているところがその印象を強めているのかもしれない。その点は年よりもだいぶ若く見える色麻を彷彿とさせるが、胸は女性らしい膨らみを見せており、よく見るとお尻なども丸みを帯びている。体の線が出にくいスーツを着ていることから注意しないとわからないが、それなりのプロポーションの持ち主のようだった。

「こちらへどうぞ。本日の聴取は和羽様と、興長、前金、水谷と聞いておりますが・・・あいにく興長につきましては昨日から体調を崩しておりまして、休んでおります。よろしいでしょうか?」

構わないと告げ、聴取のために割り当てられた小会議室に案内してもらう。昨日使ったところとは違い、社長代理たちが詰めているフロア、いわゆる役員室が立ち並ぶ階の会議室のようだった。

昨日より若干、据え付けてある家具なども豪華であるところを見ると、重要な商談を行ったりするための部屋なのかもしれない。

「こちらで少しお待ちください。前金と水谷に声をかけてきます」

その後、前金と水谷が次々と部屋を訪れたが、聴取内容は昨日得られた情報とさして変わらなかった。水谷が夜遅くに車両が出入りする音を何度か聞いた気がする、と言っていたが、それはおそらくコンビニに向かった鳴海のものだろうということで片がついた。

二人が戻った後、再び吾嬬がやってきた。

「申し訳ありません。和羽様は現在来客がありまして・・・少々お時間をいただくことになるかと思います。それまでこちらをお飲みになってお待ちください」

ことり、とソーサーに置かれたコーヒーが供される。良い香りがたっていることからインスタントではないらしいことはすぐに分かった。
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