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天狐あやかし秘譚
第108章 匿影蔵形(とくえいぞうけい)
「ただ、和羽の担当している半導体部門については、これから大口の契約が入るかもしれないという情報もあり、それによっては一発逆転の目もあるという話もあります。」
「そうすると、一番不利なのは時弥?」
「まあ、そこについても最後までわからない状況というのが社内の多く人の見方みたいです」

ふーん・・・と西園寺が声を上げる。
ビジネスのことはよくわからないが、要するに4人の社長候補たちはいい勝負をしているようなのだ。

「じゃあ、取り調べの結果は?」

実際のところ、本日取り調べができたのは12名中、8名だけだった。
社長代理のひとりである和羽、時弥の秘書、興長と社員の前金、水谷の4人は休暇だったり不在だったりで話を聞くことができなかった。

「秘書って社長がいるのに休んでいいものなの?」
「時弥は秘書が二人いるんです。今日は鈴本という女性の秘書が出勤していましたね」
「ふーん・・・」

そもそも秘書、なんてものに縁がない公務員である西園寺はピンとこないが、秘書というものが何人かいるということもあるらしい。そういえば政治家は第三秘書なんてものまでいるらしいから、そんなものなのかもしれないななどと考える。

「現時点で疑わしい人はいた?」

実際、西園寺も和弥とその秘書鳴海、それから朔弥とその秘書である吾嬬の取調べをしていた。が、得られた情報はそう多くはなかった。

「残念ながら、昨日の夜、会社を出入りした者の証拠や証言を引き出すことはできませんでした。そもそも社長連中は個室にいる事が多く、社員がその存在を認識できていません。社員同士は相互にチラチラと存在を確認し合っていたようですが、確実に誰が何時に会社にいたかを証言できるわけではないみたいです」

そりゃそうか・・・皆仕事をしているわけで、他人がどう動いているかなどに関心があるわけがない。

「秘書と社長の証言も一致しています。・・・が、これも口裏合わされたら終わりですからね」

「ところで、この12人以外が会社にいたとか、出入りした可能性は?」
西園寺が確認する。
もし、これ以外にあの通用門から出入りできる人がいるとしたら、容疑者の範囲から考え直さなくてはいけない。
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