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天狐あやかし秘譚
第108章 匿影蔵形(とくえいぞうけい)
いや、そのやり方のほうがよほど遺恨があるだろう・・・と西園寺は思った。
その時、コンコン、と扉をノックする音が聞こえる。

「あ、どうやら社長代理殿が戻ってきたみたいです。
 この後は、方針どおりでいいですね?」
「はい・・・お願いします。」

こうして、大武エレクトロンにおける捜査の第一日目がスタートをした。

☆☆☆
夕刻、県警本部の会議室で情報交換が行われる。
本来、捜査本部の上席には県警幹部が座ることになっているが、今回は呪殺班の事案であることから、そこには陰陽寮側の捜査責任者である西園寺が座っていた。

「今日、分かったこと、教えて」

10名ほどの捜査員たちが次々と報告をあげてきた。

「まず血痕ですが、やはりDNAは採取できませんでした。人のものではない、ということだけが確認されました。」
「大武エレクトロンの経営状況ですが、非常に良好なようです。
 大武エレクトロン以外にも手広く事業を展開しており、大武家の資産は少なくとも数百億と見積もられています。」

「大武朔弥が提出してきた昨日の会社居残り者は全部で12名。内訳はホワイトボードに記載してあります」
これは西園寺に同行した石川の言だった。
ちなみにその12名とは・・・

大武和弥とその秘書、鳴海恭一
大武朔弥とその秘書、吾嬬千鶴
大武時弥とその秘書、興長景一
大武和羽
社員であり、和弥の部下、皆本隆二、前金美和子
同じく朔弥の部下、水谷光太郎、坂本めぐみ
和羽の部下である引間秀悟

「社長『代理』たちは皆居残りしてたってこと?」
「そうですね。まあ、無理もないんじゃないですか?」

後一ヶ月で自分の去就が決まる。しかも天と地ほどの待遇の違いがあるわけだ。遺産相続戦に勝てば億万長者、負ければ一族追放で路頭に迷っても不思議ではないというのだから、必死になるのも頷ける。

「で、ちなみに、売上って今どうなってるの?」
「はい、社内速報値を入手したところ・・・
 6月期までの集計で現状一位は次男の朔弥
 二位が長男の和弥
 三位が三男の時弥
 そして四位が和羽のようです」

数値も読み上げられたが、それによると、一位と二位の間は微妙な差のようだが、三位は少し引き離されているようだった。四位の和羽についてはだいぶ不調であるようだった。
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