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天狐あやかし秘譚
第108章 匿影蔵形(とくえいぞうけい)
☆☆☆
「器物損壊・・・ですか?我が社の社員が?」
応接室で朔弥が相対していたのは三人の人間だった。

ひとりは白髪まじりで、眉間に深いシワが刻まれた40代後半くらいの男性。
もうひとりは対照的にずいぶんと若い男性だ。一見すると優男風な顔貌だが、朔弥が見た感じではジャケットの下にはだいぶ鍛えられた筋肉があるように見えた。
最後のひとりはだいぶ童顔の女性だ。体型も相まって、紺のレディーススーツがお仕着せに見える。もしセーラー服を着ていたら高校生・・・下手したら中学生にすら見えるかもしれない。

なんともアンバランスな3人だ・・・それが朔弥の第一印象だった。

「疑い、ですね。詳しい被害等はまだ調査中なのですが、昨夜、恐山の山中で被害があったようで、その犯人がこちらの会社の敷地内に逃げ込んだという証言が得られまして。時刻は21時頃なんです・・・。見たところ、こちらの会社は出退勤をIT管理されているようですね。・・・その時間に会社にいた方、出入りした方についての情報の提供をいただければと思うのですが・・・」

40代の男、石川と名乗った刑事がそう切り出してきた。
朔弥は一瞬、思案したが、ここで警察に逆らうのも得策ではないと判断し、その申し出を承諾することにした。

「あと、もしよろしければ、その時こちらにいた社員さんに捜査のご協力をいただければと思うんですよね」
若い方の男性、名を西園寺と名乗った、が続ける。

「わかりました。それも手配しましょう。・・・昨日の9時というと、こちらに残っている人数もそれほどいないはずです。すぐに用意させますので、おかけになってお待ちください。」

そう告げると、朔弥は部屋を後にした。
扉がしまった途端、はーっと息をついて、力を抜いたのは一番末席に座っていた女性、色麻だった。

「石川さん、ご協力感謝します」
西園寺が石川に軽く会釈する。
「なに、これくらいの協力、大したことないですよ」
石川は青森県警捜査一課、呪殺班の筆頭主任だった。

「これからどうするんですか?西園寺様」
着慣れないスーツを窮屈そうにあちこち引っ張って少しでも着心地を良くしようとしている色麻が尋ねてきた。
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