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天狐あやかし秘譚
第107章 【第21話 冥穴】居安思危(きょあんしき)
鬼とは元来、もともと鬼の才がある者の魂が歪んでしまった成れの果てだ。鬼の才を持つ人間が何らかの理由で追い詰められたり、鬼道に触れたりすることで鬼になる。しかし、そうやって成った鬼がすぐさま強力な力を持つわけではない。本当に力をつけるには、数十年、数百年の時が必要なのだ。

間近で接してわかった。
少なくとも、この鬼はここ数年で成った鬼ではない・・・。
もっと古くからいる、もっと人を喰っている・・・とても邪悪ヤツだ。

先程の凄まじい鬼気を感じたときに気づくべきだった。
こいつはそう簡単に死ぬような鬼ではないのだ。

それが証拠に、西園寺様が放った呪力の籠もった弾丸はすでに肩と胸、腹についたそれぞれの傷から押し出され、傷自体も治りかけているようだった。

獣のような独特の臭気が鼻を突く。
思ったより素早い動きで迫る鬼の前に、私はただ硬直してしまっていた。

浅黒い腕が振り下ろされる様子が、まるでスローモーションのように私の目に映る。ヤバい、これ、死んだかも・・・。そう思ったのだが、特に走馬灯のようなものは走らなかった。

ただ、思っただけだった。
ああ、なんか、あっけなかったな・・・、と。

ガキィイインッ!!

強烈な金属音が目の前で響く。
「色麻!下がってろ!」
間近で聞こえたのは、西園寺様の声だった。気がつくと、目の前に彼の背中があった。手にした雷炮神器の銃身で鬼の腕を受け止めていたのだ。

ウソ・・・あの距離を一気に詰めて、私と鬼との間に立ちふさがった・・・?

「早く、こっちです。色麻さん!」
後ろからぐいと新城に引っ張られる。そのまま私は再び四音結界の中に引き戻された。そんな私の様子をチラと一瞥すると、西園寺様が鬼を思いっきり蹴飛ばし、私達から遠ざける。

更に、数発、雷炮神器が火を吹き、よろけた鬼の両肩、そして心臓を正確に弾丸が射抜いていった。

「ぐぅああああっ!!」
苦悶の表情を浮かべる鬼に対して、なおも弾丸を撃ち込み続ける。

「さっきは、遠慮しましたがっ!」

ドン!ドン!
両足を火の呪力に包まれ、真っ赤に染まった弾が射抜いていく。

「・・・それだけ丈夫なら、死にはしないでしょうっ」

ドン!ドン!
みぞおち辺りに2発の弾がぶち込まれる。
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