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天狐あやかし秘譚
第107章 【第21話 冥穴】居安思危(きょあんしき)
☆☆☆
午前9時に現場入りした封印班の面々の調査は滞りなく進んだ。それでも恐山全域の呪力値の測定と冥穴の定位、祭祀場所の設定まで終えるとすでに時刻は夕刻に迫っていた。宵闇があたりを覆い始め、ただでさえ地獄のような光景であると言われている恐山の景観は、まさに冥府のそれになりつつあった。
カラスだろうか、大型の鳥が羽ばたく音が聞こえる。その音にビクリとして、私ー色麻樹里ーは肩をすくめた。
ビビっている自分の様子に気づかれてやしないかと、そっと隣にいる西園寺様の方に目をやるが、幸運なことに彼は何やら山陰の方に目をやっていた。
それを見て、ほっと胸をなでおろす。
よかった・・・彼の方が位階は上だとしても、陰陽寮では私が先輩だし、何より年上だ。経験があるところを見せなければならない。そんなふうに思っていたからだ。
「いかがしましょう西園寺様。占部によると冥穴のほころび具合は、やはりかなり深刻とのことです。これから祭祀を始めますか?それとも明日、明るくなってからにした方が良いでしょうか?」
正直、私としては祭祀は明日に回したいというのが本音だった。怖い、というのもあるが、冥穴は割とデリケートな存在だ。祭祀に伴って冥穴を刺激した際、妖魅が溢れてくる可能性もゼロではない。その時、やはり昼間の方が対処が楽なのだ。
しかし、私の思いに反して、西園寺は何やら辺りをうかがうと一言言った。
「いや、このままやった方がいいかもしれない」
いつも、私以上に臆病で、弱気で、サボりたがりのくせに、こういうときだけ何でやる気を出すんだよ!と心の中で突っ込みたくなる。
しかし、こうもきっぱりと断定されてはしょうがない。
彼の方が上司であることは間違いないのだ。
「わかりました。では、篝火の準備をいたします」
そう言ってその場を離れようとすると、西園寺に呼び止められる。
「封印の祭祀にはどの程度の時間がかかるの?」
「そうですね・・・3時間ほどはかかるかと思います」
「分かった。念のためだけど、高根に周囲の呪力数値のモニターをさせて・・・それから岩下は僕の伝令役。通信機器は?」
「無線と衛星携帯の用意があります」
なんだろう?
なにか、西園寺様がいつになくピリピリしている気がする。
午前9時に現場入りした封印班の面々の調査は滞りなく進んだ。それでも恐山全域の呪力値の測定と冥穴の定位、祭祀場所の設定まで終えるとすでに時刻は夕刻に迫っていた。宵闇があたりを覆い始め、ただでさえ地獄のような光景であると言われている恐山の景観は、まさに冥府のそれになりつつあった。
カラスだろうか、大型の鳥が羽ばたく音が聞こえる。その音にビクリとして、私ー色麻樹里ーは肩をすくめた。
ビビっている自分の様子に気づかれてやしないかと、そっと隣にいる西園寺様の方に目をやるが、幸運なことに彼は何やら山陰の方に目をやっていた。
それを見て、ほっと胸をなでおろす。
よかった・・・彼の方が位階は上だとしても、陰陽寮では私が先輩だし、何より年上だ。経験があるところを見せなければならない。そんなふうに思っていたからだ。
「いかがしましょう西園寺様。占部によると冥穴のほころび具合は、やはりかなり深刻とのことです。これから祭祀を始めますか?それとも明日、明るくなってからにした方が良いでしょうか?」
正直、私としては祭祀は明日に回したいというのが本音だった。怖い、というのもあるが、冥穴は割とデリケートな存在だ。祭祀に伴って冥穴を刺激した際、妖魅が溢れてくる可能性もゼロではない。その時、やはり昼間の方が対処が楽なのだ。
しかし、私の思いに反して、西園寺は何やら辺りをうかがうと一言言った。
「いや、このままやった方がいいかもしれない」
いつも、私以上に臆病で、弱気で、サボりたがりのくせに、こういうときだけ何でやる気を出すんだよ!と心の中で突っ込みたくなる。
しかし、こうもきっぱりと断定されてはしょうがない。
彼の方が上司であることは間違いないのだ。
「わかりました。では、篝火の準備をいたします」
そう言ってその場を離れようとすると、西園寺に呼び止められる。
「封印の祭祀にはどの程度の時間がかかるの?」
「そうですね・・・3時間ほどはかかるかと思います」
「分かった。念のためだけど、高根に周囲の呪力数値のモニターをさせて・・・それから岩下は僕の伝令役。通信機器は?」
「無線と衛星携帯の用意があります」
なんだろう?
なにか、西園寺様がいつになくピリピリしている気がする。

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