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天狐あやかし秘譚
第107章 【第21話 冥穴】居安思危(きょあんしき)
冥穴とは、あの世である『常世』もしくは『冥府』と呼ばれる場所とこの世が何らかの形で接点を持っている場所に発生するとされるスポットである。それは特定の地理的条件や呪的条件によって自然発生し、時折、悪さをする。

そして、実は日本全国にこうした『冥穴候補』は数多く存在する。心霊スポットの中には、この冥穴の影響を受けたホンモノも混じっているので注意が必要だ。とはいえ、多くの場合、自然発生した揺らぎのような冥穴は現世に大した影響を及ぼすことはない。

しかし、今回はちょっと話が別である。
冥穴の親玉であるところの『黄泉平坂』が一時とは言え、解放されてしまったことから、全国の冥穴が活性化しているのだ。放置すれば、実害が出てしまうことも懸念されている。もちろん、『活性化』だけでも被害が出る可能性があるのだから、何かの間違いで冥穴が開いてしまったら、それは『実害』どころでは済まないわけだ。

「まだ、開いてない?」
「当たり前です!」

色麻にビシッと言い放たれ、西園寺はタジタジになる。いかんせん、21歳の西園寺よりも色麻のほうが年上であり、キャリアも長い。しかも東北支部に着任も早いと来ている。階級としては、属の四位という位階を有している西園寺のほうが本来上なのだが、なんとなく頭が上がらないのである。

「我が支部が管轄する東北管区内には、日本最大の霊場である『恐山』があります」
バン、と色麻がホワイトボードを平手で叩く。その音にひぇっと西園寺が声を上げる。
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