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天狐あやかし秘譚
第106章 形勢逆転(けいせいぎゃくてん)
☆☆☆
宵闇が迫るマンションの中庭、その一部の闇がムクリと不自然に膨らみ始めた。それは見る間に大きく、大きくなり、すぐに身の丈2m弱ほどの目のない怪異の姿を取り戻す。先程、マンションの上で九条から祓われかけ、地面に溶けた怪異が、ここに姿を表したのだ。
なぜここに?
それはその怪異自身にもわからないことだった。
自身は呪霊という人の思いのわだかまりから生み出された存在だ。ソレは人にはその全貌を知り得ぬ法則に盲目的に従い、ただ動いているに過ぎないのだ。
『ぐるうううう・・・』
ソレは、建物を振り仰いだ。
一旦、その定められた経路をたどり、またあそこに行く・・・
行って、その目指す者を取り込むのである。
取り込んで、殺すのだ。
なぜ、という問いは無意味である。
ソレがそう云う存在だから、としかいいようがないのだ。
なので、飽くことなく、ソレは世の理に従って歩を進める。
一歩、一歩・・・そのまま進む。いつかあれを殺すまで。
一歩・・・そしてまた、一歩・・・
『があぅ・・・』
突然、ソレの歩みが止まった。
もし、ソレに『意思』があれば、疑問に思ったかもしれない。
なぜ、自身の身体が急に動かなくなったのかと。
見られたわけではない。
何か妨害するような障壁があるわけではない。
ただ、身体が動かなくなった。
何か別の法則が、自身を縛ったのだ。
「う・・・う・・・動くな!」
聞き覚えのある声がした。
女の声。
先程、ソレを見た、女・・・の声・・・
頭を巡らせると、自身の背後に女がいるのが分かった。
その女の手からは何か鋼の糸のようなものが幾筋も伸びていた。
ここに来て初めて、ソレは自身の周囲の地面に円形状に五本の鏢が突き刺さっているのを『見た』。
「はあぁあああああっああああ!」
身を捩ろうとするが、全く動くことができない。
足元の鏢が薄っすらと輝き、そこから放たれた光の線が五芒星を結んでいく。
宵闇が迫るマンションの中庭、その一部の闇がムクリと不自然に膨らみ始めた。それは見る間に大きく、大きくなり、すぐに身の丈2m弱ほどの目のない怪異の姿を取り戻す。先程、マンションの上で九条から祓われかけ、地面に溶けた怪異が、ここに姿を表したのだ。
なぜここに?
それはその怪異自身にもわからないことだった。
自身は呪霊という人の思いのわだかまりから生み出された存在だ。ソレは人にはその全貌を知り得ぬ法則に盲目的に従い、ただ動いているに過ぎないのだ。
『ぐるうううう・・・』
ソレは、建物を振り仰いだ。
一旦、その定められた経路をたどり、またあそこに行く・・・
行って、その目指す者を取り込むのである。
取り込んで、殺すのだ。
なぜ、という問いは無意味である。
ソレがそう云う存在だから、としかいいようがないのだ。
なので、飽くことなく、ソレは世の理に従って歩を進める。
一歩、一歩・・・そのまま進む。いつかあれを殺すまで。
一歩・・・そしてまた、一歩・・・
『があぅ・・・』
突然、ソレの歩みが止まった。
もし、ソレに『意思』があれば、疑問に思ったかもしれない。
なぜ、自身の身体が急に動かなくなったのかと。
見られたわけではない。
何か妨害するような障壁があるわけではない。
ただ、身体が動かなくなった。
何か別の法則が、自身を縛ったのだ。
「う・・・う・・・動くな!」
聞き覚えのある声がした。
女の声。
先程、ソレを見た、女・・・の声・・・
頭を巡らせると、自身の背後に女がいるのが分かった。
その女の手からは何か鋼の糸のようなものが幾筋も伸びていた。
ここに来て初めて、ソレは自身の周囲の地面に円形状に五本の鏢が突き刺さっているのを『見た』。
「はあぁあああああっああああ!」
身を捩ろうとするが、全く動くことができない。
足元の鏢が薄っすらと輝き、そこから放たれた光の線が五芒星を結んでいく。

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