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天狐あやかし秘譚
第77章 背水之陣(はいすいのじん)

そう口にしたのは、近くにいた女陰陽師だった。彼女が言う通り、打ち払われたところ、本来首や頭部があるべきところには何もなかったのである。ヤギョウは『首無し』だったのだ。
「まずった・・・こいつ、死霊やったんか!」
そうか、だからか!
土御門は思った。先程まで彼らを縛っていたのは、呪力の収束を阻害し、収束したそれを宙空に逃がすことであやかしの類を束縛する『水気』を用いた縛鎖術だった。しかし、死霊はそれそのものが五行の『水気』に属するものであり、水気の術の効きが悪い。
ヤギョウと呼ばれた者を土御門達は、カダマシらと同じ『神宝を携えた人間』と考えていたのだが、それが違った。この違いによって縛鎖の効力が薄くなってしまっていたのだ。
ダリに『首』を刎ねられたヤギョウは、体を強引にねじり、それによって彼を縛り付けていた見えない水の縛鎖が全て引きちぎられるのを土御門は感じ取った。
「しもた!」
縛鎖術が解けた一瞬の隙を突き、ヤギョウが大きく地面を踏みしめる。途端、周囲の大地がぐらりと揺れ、陰陽師たちがよろめき、陣形が乱れた。
ーしめた!
「だいだらぼっち!!」
陣形が崩れ、呪術による縛鎖が緩んだ隙を見逃さず、今度はカダマシが神宝・生玉の呪力を解放する。解放された呪力はカダマシのイメージに呼応し、その肉体に変化を及ぼしていく。その身体はたちまち20メートルほどまで大きくなっていく。
『だいだらぼっち』は、当初カダマシが第三形態と呼んでいたものだ。当初は単に、その形態を考案した順番だったのだが、実はそれらが生玉から引き出す神力の段階をも意味していることを後に知った。
それを知るに至ったのは、第1段階である『宿禰』よりも第2段階である『童子』の方が、そして、『童子』よりも第3段階である『だいだらぼっち』や『大口真神』の方が、使用できる時間が短く、かつ使用後の身体にかかる反作用が強かったからである。特に『だいだらぼっち』は負荷が強いようで、その使用は10分程度に限られ、かつ、使った後には1時間程度は身体が熱病に侵されたかのようにだるくなるのだ。
「まずった・・・こいつ、死霊やったんか!」
そうか、だからか!
土御門は思った。先程まで彼らを縛っていたのは、呪力の収束を阻害し、収束したそれを宙空に逃がすことであやかしの類を束縛する『水気』を用いた縛鎖術だった。しかし、死霊はそれそのものが五行の『水気』に属するものであり、水気の術の効きが悪い。
ヤギョウと呼ばれた者を土御門達は、カダマシらと同じ『神宝を携えた人間』と考えていたのだが、それが違った。この違いによって縛鎖の効力が薄くなってしまっていたのだ。
ダリに『首』を刎ねられたヤギョウは、体を強引にねじり、それによって彼を縛り付けていた見えない水の縛鎖が全て引きちぎられるのを土御門は感じ取った。
「しもた!」
縛鎖術が解けた一瞬の隙を突き、ヤギョウが大きく地面を踏みしめる。途端、周囲の大地がぐらりと揺れ、陰陽師たちがよろめき、陣形が乱れた。
ーしめた!
「だいだらぼっち!!」
陣形が崩れ、呪術による縛鎖が緩んだ隙を見逃さず、今度はカダマシが神宝・生玉の呪力を解放する。解放された呪力はカダマシのイメージに呼応し、その肉体に変化を及ぼしていく。その身体はたちまち20メートルほどまで大きくなっていく。
『だいだらぼっち』は、当初カダマシが第三形態と呼んでいたものだ。当初は単に、その形態を考案した順番だったのだが、実はそれらが生玉から引き出す神力の段階をも意味していることを後に知った。
それを知るに至ったのは、第1段階である『宿禰』よりも第2段階である『童子』の方が、そして、『童子』よりも第3段階である『だいだらぼっち』や『大口真神』の方が、使用できる時間が短く、かつ使用後の身体にかかる反作用が強かったからである。特に『だいだらぼっち』は負荷が強いようで、その使用は10分程度に限られ、かつ、使った後には1時間程度は身体が熱病に侵されたかのようにだるくなるのだ。

