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天狐あやかし秘譚
第77章 背水之陣(はいすいのじん)
同じ第3段階である『大口真神』はまだ負荷が軽く、この状態は1時間以上を継続することができたが、やはり、使用後の状態は同じだった。

言ってみれば、『だいだらぼっち』はカダマシにとっての切り札のようなものなのだ。可能であれば第2段階の『童子』でケリを付けたいと思っているが、この状況では致し方ない。出し惜しみはできない。

カダマシに躊躇はなかった。

「ぐぅぉおおおおっ!!」

暗闇の中、小山のようにせり上がった巨躯が、天に向かって咆哮した。その声は大気をビリビリと震わせ、それだけで何人かの術者が気圧され、尻餅をつく。

ー全員・・・死ね!

モタモタしていれば、また例の『水の捕縛術式』とやらで束縛を受けてしまう。幸運なことに昨日自分を一瞬で呪縛した大弓を担いだ女は近くにいない。もしかしたら、周囲に巡らせている金色の結界を維持する方に回っているのかもしれない。

カダマシが大きくて両手を二度、三度と振り回した。それが発する強風が周囲の術者達を容赦なく吹き飛ばしていく。

チラと目をやると、同じく束縛を破ったクチナワが次々に妖魅の類を召喚しているのが見えた。クチナワの神宝・蛇肩巾(へびのひれ)は時間さえあれば強力な獣型の妖怪を召喚できるはずだ。今は小玉鼠や鎌鼬のようなもので周囲を牽制しているだけだが、大物を召喚させさえすれば、この場を乱すのに十分な戦力になるはずだ。

「クチナワ・・・避けろよ」

隙を作るため、クチナワと陰陽師たちの間めがけて、大きな拳を振り下ろす。クチナワは一瞬、カダマシの方を目を見開くように見つめていたが、諦めたのか、大きな狸のようなものを呼び出していた。

ドゴン!

破裂音が鳴り、振り下ろした拳の周辺がちょっとしたクレーターのように窪んだ。直撃しなくとも、その衝撃でまた、数人の陰陽師たちが吹き飛んでいく。クチナワの方を見ると、狸のような妖怪が薄いヴェールのようなものを何重にも張り巡らせ、彼を守る様子が見えた。

左サイドでは小脇に棺桶を抱えたまま、俊敏な動きで敵を翻弄し続けているヤギョウが見える。

ークチナワもヤギョウも戦える。陰陽師たちの陣形は総崩れだ。
 なら、俺のやることはひとつだ・・・

田畑を蹴り、カダマシは奔った。
彼が狙うのは、黄泉平坂を塞ぐ千引の大岩だった。
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