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天狐あやかし秘譚
第77章 背水之陣(はいすいのじん)
「そもそもさ、性に合わなかったんだよなぁ
 こういう、裏をかくとか、奇襲とかってよ・・・」
「何負け惜しみ言ってんねん。あっさり引っかかってくれてからによ」
「そもそも、漢(おとこ)ならよ・・・正面突破だろうが・・・」

カダマシが身動ぎをすると、不可視の縛鎖がギチギチと軋みをあげる。やはり、力を入れようとしたそばから、抜けていく実感がある。

「ヤギョウっていうんか、そっちのでかいの。まあ、無理しなや、これだけの術者で縛っとるんや。指一本動かせないだろうし、水の術式であんさんらの神宝の発動をおさえられるの、先刻承知や。そっちの図体でかいのも、どんな神宝を持っとるか知らんが、同じことやで・・・」

数人の陰陽師がヤギョウに近づいていく。ヤギョウが小脇に抱えている箱を取り上げようとしていた。

しかし、カダマシの目は死んでいない。ぐっと土御門を見つめ返す。
その目に、万が一の反撃のチャンスもないと思っていた土御門も、いささかたじろいでいた。

ーなんや?こいつ・・・他になんかある言うのか?
 無駄やで・・・緋紅であってもこの中に干渉することはできひん。
 呪的にも、物理的にも、ここは絶界の中
 お前らは文字通り、袋のネズミなんや・・・

その土御門の想いとは裏腹に、カダマシは吠えるように叫ぶ。 
「一緒に、コイツラぶっ殺そうぜ!
 なあ!・・・ヤギョウっ!」

《ぶぐぅ・・もっ!》

ヤギョウが奇妙な音をあげる。その瞬間、そこにいた全ての陰陽師の背筋が粟立った。なぜなら、彼らはヤギョウが『不遜なり。鏖(みなごろし)にせむ』と【言った】のがわかったからだ。

「なんや!?こいつ!」

異変に気が付き、土御門が剣を構えた。そして、誰よりも早く反応したのはダリだった。
古槍を脇構えにして地面を蹴り、ヤギョウに向けて横薙ぎにそれを一閃させる。
目にも止まらない速さで槍撃がヤギョウの首を刎ねる。

「な・・・っ!?」

ダリが目を見開く。そこにあまりも手応えがなかったからだ。まるで布を打ち払った、ただそれだけのような軽い感触しかない。

ダリの槍の一閃でヤギョウが被っていた紫の頭巾がふわりと宙空に舞った。そして、そこには・・・何も、なかったのである。

「首!」
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