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天狐あやかし秘譚
第77章 背水之陣(はいすいのじん)

☆☆☆
ーちくしょう、しくじった・・・
カダマシは歯噛みした。先程まで自分たちが思うさま荒らし回っていたのは、どうやら現世ではなかったようだ。
なにか、結界か、それとも異界のようなものだったのだろう・・・、いや、妖怪である天狐がその中央にいたところをみると、妖怪や神の類が作る『異界』に知らぬ間に入れられていたと考えるべきだ。
周囲を見渡すと、ざっと30ほどの陰陽師達。その中には、土御門以外にも、昨晩自分を追い詰めた白髪の術者、紫髪の妙な女術者、一昨日森の中で迎え撃った男の術者達の姿も見えた。そして、視線をその向こうにやると、自分たちをぐるりと円形に取り囲むように障壁がめぐらされているのも見て取れた。天から地に突き刺さるオレンジ色のオーロラを思わせるそれは、荘厳ささえ感じさせた。
ーいつの間にか、結界にも囲まれている・・・?
障壁は、ぐるりと半径3キロ程度を囲んでいるように見える。そして、カダマシには、その色と形態に見覚えがあった。
『玄武盤石厳界』
陰陽寮の者たちが使う結界術の中でも最高峰である四神クラスと言われる結界、その中でも最硬度を誇る術だった。かつて、緋紅が八握剣で打ち破ったということは聞いていたが、逆に言えば、緋紅ほどの術者が限界に近い出力を持ってしてしか破れない結界、ということだ。
そして、先程から身体が重いとも思っていた。このことはヤギョウも感じているようで、先程から《ぐも、ぐも》何事か呟いている。おそらく、術者達が先程から手印を結び小さく唱えている呪言が、何らかの束縛を自分らに課しているのだと想像がつく。昨日、弓を担いだ女に掛けられた呪術に似ているとカダマシが感じた通り、周囲の術者が彼らに施しているのは、呪力を溶かし拡散させる水気の捕縛術式だった。
ー周囲を囲まれ、何重にも掛けられた捕縛術式、その外側にはご丁寧に絶対防壁を誇る結界、・・・更にそこにいる日本最強の術者と神にも等しい大妖怪・・・
「ふ・・・フハハっ!」
カダマシが笑い出す。最初は小さく、それは次第に哄笑に変わっていく。
「あん?何がおかしい、あんさん?今度こそ、お縄につけや」
確かに身体の自由は殆ど効かない。
だけど・・・
ーちくしょう、しくじった・・・
カダマシは歯噛みした。先程まで自分たちが思うさま荒らし回っていたのは、どうやら現世ではなかったようだ。
なにか、結界か、それとも異界のようなものだったのだろう・・・、いや、妖怪である天狐がその中央にいたところをみると、妖怪や神の類が作る『異界』に知らぬ間に入れられていたと考えるべきだ。
周囲を見渡すと、ざっと30ほどの陰陽師達。その中には、土御門以外にも、昨晩自分を追い詰めた白髪の術者、紫髪の妙な女術者、一昨日森の中で迎え撃った男の術者達の姿も見えた。そして、視線をその向こうにやると、自分たちをぐるりと円形に取り囲むように障壁がめぐらされているのも見て取れた。天から地に突き刺さるオレンジ色のオーロラを思わせるそれは、荘厳ささえ感じさせた。
ーいつの間にか、結界にも囲まれている・・・?
障壁は、ぐるりと半径3キロ程度を囲んでいるように見える。そして、カダマシには、その色と形態に見覚えがあった。
『玄武盤石厳界』
陰陽寮の者たちが使う結界術の中でも最高峰である四神クラスと言われる結界、その中でも最硬度を誇る術だった。かつて、緋紅が八握剣で打ち破ったということは聞いていたが、逆に言えば、緋紅ほどの術者が限界に近い出力を持ってしてしか破れない結界、ということだ。
そして、先程から身体が重いとも思っていた。このことはヤギョウも感じているようで、先程から《ぐも、ぐも》何事か呟いている。おそらく、術者達が先程から手印を結び小さく唱えている呪言が、何らかの束縛を自分らに課しているのだと想像がつく。昨日、弓を担いだ女に掛けられた呪術に似ているとカダマシが感じた通り、周囲の術者が彼らに施しているのは、呪力を溶かし拡散させる水気の捕縛術式だった。
ー周囲を囲まれ、何重にも掛けられた捕縛術式、その外側にはご丁寧に絶対防壁を誇る結界、・・・更にそこにいる日本最強の術者と神にも等しい大妖怪・・・
「ふ・・・フハハっ!」
カダマシが笑い出す。最初は小さく、それは次第に哄笑に変わっていく。
「あん?何がおかしい、あんさん?今度こそ、お縄につけや」
確かに身体の自由は殆ど効かない。
だけど・・・

