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天狐あやかし秘譚
第76章 人面獣心(じんめんじゅうしん)
☆☆☆
6時間ほどたった後、緋紅はゆっくりと目を覚ました。

いつの間にか左前の術により大きく損傷した右半身の傷は大分ふさがり、炎症による発熱も収まっていた。身体にはだるさが残っていたが、それでも動かすのに支障がないレベルに回復をしている。

ー僕は、一体・・・?

天井は見知った屋敷のそれだった。自身の左半身にある温かな温もりに気づく。そこからゆっくりと優しい気が身体に流れ込んでくるのが感じられた。

そちらに目をやると、目を閉じて軽い寝息を立てている全裸の女がいた。口は半開きになり、胸が軽く動いている。緋紅は記憶をたどり、それが、供物の女性であったことを思い出した。

身体を起こす。右腕を見ると、上腕部が縛られており、何者かによって止血がなされていたことが分かる。ここで初めて、自分が命じたわけでもないのに、足玉の力により癒やされていることに思い至った。

「お前が、やったのか?」

寝ている女は当然答えることはない。少し唇を噛み、止血帯の代わりとなっていたワイシャツを取り去ると、痺れる右手でそっと女に手を触れた。その体内にある足玉により、彼女の寿命の9割方が削れていることがわかった。

少し考える素振りを見せると、緋紅は傍らの衣装箱から着物を取り出し羽織り、閨を出た。

「おい!誰か」
声を上げるとすぐに襖が開く。
「お呼びでしょうか?」
そこに現れたのは、頭巾を被った屋敷の従者のひとりだった。

「朝方、供物を持ってきたのは、お前か?」
その問いを聞いた従者の胸がどきりと跳ねた。

ーしまった・・・何か粗相が!?

しかし、恐る恐る見上げた緋紅の表情がこれまでに見たことがないほどにこやかであったことで、こっそりと息をついた。

ー良かった、殺されるかと思った・・・。

「はい、私めでございます」
「あの女を選んだのはお前か?」
「はい、、、」
「そうか、よくやった」

ーよくやった!?・・・お館様が、我々従者を褒めるなど!?

それは、青天の霹靂だった。お館様にとって『大和の民』である自分らは虫けら同然。役に立つから飼っているだけで、そうでなければ目に触れるだけでも不愉快なのだと、そう思ってきた。だからこそ、神宝使いや、慰み者として最後は嬲り殺される『供物』は別として、屋敷の従者たちは、顔を極力見せないよう頭巾を被っているのが常なのだ。
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