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天狐あやかし秘譚
第74章 比翼之鳥(ひよくのとり)
☆☆☆
廃ホテルが静まり返る。夜が軋み、日の出が近いことがわかる。森が一番深く眠る時間、闇が最も濃くなる時間に、それは前触れもなく現れた。

ビシッ!

空間が縦に裂ける。そこから昏い瘴気が溢れ、周囲の闇と混ざり空気を濁らせる。腐臭に似たそれはまたたく間に広がり、異常が顕現したことを知らせた。

裂け目から男が現れた。どこにでもいるような特徴に乏しい容貌の男だ。白っぽいワイシャツにチノパンというラフな出で立ち、足元はくたびれたスニーカーだった。

男は廃ホテルを見上げ、そして、正面を見据えた。
そこには、男とは対照的な、派手なアロハシャツに身を包んだ糸目の男性が立っていた。

「おや?お出迎えしていただけるとは光栄だなあ・・・土御門さん、でしたっけ?」
「やーっぱきよったな。緋紅」

裂け目から現れた男ー緋紅ーが右手を横に伸ばすと、そこの闇から直刃の刀身が現れる。刀身の長さは80センチメートル。反りのない古代の直刀だった。

緋紅の武器、神宝、八握剣(やつかのつるぎ)だ。

神から授けられたその剣に宿るのは純粋な破壊力。振るえば海を割り、山を砕き、一国を容易に滅ぼすほどの威力を顕す。

一方、糸目のアロハー土御門ーも肩に担いだ剣を構えた。

それもまた、直刃の日本古来の形状をしていた。88.2センチの刀身には、『三公五帝・南斗・北極・北斗・白虎・青龍』が刻まれており、退魔滅殺の効果を有する土御門家に伝わる秘剣。その名を将軍剣という。土御門が最も好んで使う宝剣である。

「あの狐は参戦しなくていいのかい?ああ、そうか。カダマシとの戦いでまだ回復途上というわけかい?戦力ダウンはお互い様だねぇ・・・」

唇の端を歪めるように緋紅が笑う。その言葉を聞いて土御門が目を少しだけ細めたのに、おそらくこの場の誰も気づかなかっただろう。

ーダリはんにはもう少々『回復』に専念してもらいたいんは確かなんやが・・・
 こいつ・・・?

この時、いろいろな仮説が土御門の脳裏に過ったが、今は戦闘に集中するべく頭を目の前の敵に向けて切り替えた。
「はじめよか・・・」
土御門が将軍剣を軽く握り直し、霞に構える。その姿勢で気を練りあげていく。
「お手柔らかに・・・」
緋紅は、言葉の丁寧さとは裏腹に邪悪そのものの笑みを浮かべた。

夜明け前の闇を震撼させるような戦いの火蓋が切られようとしていた。
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