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淫夢売ります
第55章 斜陽の楽園:壊れる世界
そんな生活が2週間も続くと、食事も喉を通らなくなる。当然、彰吾に合わせる顔なんかない。彼には、風邪を引いた、具合が悪い、ちょっと仕事が忙しいなどと嘘をついて顔を合わせるのを避けていた。

そんな日々が、ついに限界を迎えた。

はっと気づいたら、家で包丁を手にして寝室の枕を滅多刺しにしていたのだ。自分で何をしているかわからなくなっていた。そして、そのままふらりと立ち上がると、着の身着のままでふらふらと街を歩きだしたのだ。

死にたい

頭の中はそれでいっぱいだった。
彰吾の無邪気な笑顔を思い出すたびに
将来を約束し、結婚式はどこでやろうとか、新婚旅行はとか、子供の数は何人とか・・・

そんな話をしていたのに、それがもう、自分の手の届かないところにいってしまったと思うと、悲しくて、悲しくて・・・やりきれなかった。

そして何より彰吾に申し訳がなかった。

『彰吾・・・私、私もう・・・ダメだよ・・・』

その時、どこをどう歩いたのかわからない内に、私は不思議な店の前にいた。重厚な木造りの扉、そこに掛かった木の札には『Oniromancie Morphée』とあった。なぜか、そこに招かれるようにして扉を開く。そして、その先にいた魔女から、一枚のカードを買ったのだ。

「さらら・・・目が覚めたの?」

そこまで思い出したところで、私の手を握っていた彼も目を開いた。もしかしたら何日もろくに食べていないのかもしれない。頬はこけ、目は充血して真っ赤だった。

私の目からも涙がいっぱい溢れてきた。

「ごめんね・・・ごめんね・・・
 あなたには、言えなかった。怖かった・・・死にたかった・・・」

嗚咽する私の手を、彰吾が自らの頬に引き寄せる。その頬はとても優しい温かさに満ちていた。

「俺の方こそごめん・・・俺、どうしていいか分からなかったんだ。
 さららにとって、どっちが幸せなのか・・・わからなかった」

本当に、こうして目覚めさせることが幸せなのか。
これが正しいことなのか、分からなかったんだ・・・

そう言って、彼もまたボロボロと涙を流し続けた。
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