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淫夢売ります
第55章 斜陽の楽園:壊れる世界
下を見た。
地の底にいるのは『私の理想の彰吾』
そこは夢の世界。
私が自らを癒すために逃げ込んだ・・・夢の楽園

アヴァロン

あれが夢で、そして・・・

私は上を見る。
さっきまでストーカー男だと思いこんでいたこの男性、この男性がいる世界こそが現実の世界。この声、この手の感触、この温もり・・・

「彰吾・・・」

手を握っている男の顔がよく見えた。それは涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにした彰吾だった。涙をボロボロと流しながら、それでも私の手を必死で掴んでくれていた。

「ごめん!ごめんさらら!!守れなくてごめん。辛い思いさせてごめん!気づいてやれなくてごめん・・・ごめん、ごめん!!!」

彰吾・・・彰吾・・・

「もし、さららが、そのまま夢の中にいたいなら・・・それなら俺は・・・」

一瞬、上にいる彰吾の手が緩んだ感じがする。それでもまた思い直したかのようにぎゅっと掴んできた。

私・・・私はどうしたら・・・

上を見た。そこには涙を流しながら必死に私を救おうとしている彰吾がいた。
下を見る。そこには、全てを忘れさせてくれる理想の男性が満面の笑顔で立っている。たしかに私を愛してくれている・・・そう思わせてくれる優しい彼がいる。

もう一度上を見る。
ぐしゃぐしゃの顔で、震える手で、何が正しいのかわからないまま。それでも私を・・・私を繋ぎ止めようとしている人。

つらい記憶。嫌な記憶。
恐ろしくて、おぞましくて・・・穢された身体を切り裂こうとした包丁すら手に取った日々の記憶。

もう嫌・・・あんな思いをするのは嫌なの・・・。
やっぱり・・・と私は彰吾の手を振り払おうとした。

ごめん彰吾・・・。
私、選んだんだ。
この温かな夢に逃げることを・・・。

彰吾・・・彰吾・・・
そう、私はあなたにだけは
あなたにだけはこんな汚れた私を知られたくなかったんだ

だから・・・。

この時、私ははっきりと思い出した。モルフェに行った理由を。
そこでカードを握りしめて、女主人に告げた私の本心を。

『彰吾を・・・絶対に、あの優しい人を悲しませたくないの・・・』
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