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淫夢売ります
第55章 斜陽の楽園:壊れる世界
☆☆☆
それからも時折、私は妙な夢を見ることがあった。ただ、それは黒い影に追いかけられるといったような悪夢ではなく、なにか意味のわからない不思議な夢だった。例えば、古い木造りの扉の前で何かを深く考え込んでいたり、遠くから私のことを呼ぶ知らない男性の声だったりだ。

そんな夢を見た時は決まって、目が覚めると胸がざわりと騒ぎ、頭痛がしたり、例の『ジジジジジ・・・』という耳鳴りがする。しかし、それも枕元においてあるアヴァロンのカードを握りしめるとスーッと落ち着くのだ。

また、職場で気分が悪くなることも稀ならず起こるようになっていた。有本さんとか、女性社員と話しているときにはほとんどそういったことは起こらないのであるが、男性社員と話したりするとたまに貧血のような症状が出ることがあるのだ。

一番接する機会が多いせいか、佐久本さんとの間でそれは特に多い気がした。

お陰で佐久本さんからは、
『最近、顔色悪くねえか?』
等と言われてしまう始末だった。それこそ夜は眠れているし、食事も取れている。思い当たることなどないのに、ふとした拍子にめまいや震えなどが出ることがある。

ただ、それにもアヴァロンのカードが効果的だった。

そんなわけでいつしか私は、ベッドサイドに置いておくばかりではなく、カードをバッグに入れて持ち歩くようになっていった。

家ではベッドサイドの引き出しの上から二段目に
外に出る時はバッグのサイドポケットに

こんなふうにして、近頃の私は、このカードをほぼ肌身放さず持って歩いていたのだ。

そして幸運なことに、夢の中でカードの力を使って追い払ったのが良かったのかもしれないが、あれ以来、現実の世界でも黒尽くめの男を見ることがなくなった。
もしかしたら、あの男自体、現実ではなく、そもそもが夢だった・・・のかもしれない。

全部の問題がすっかりなくなったわけではないが、概ね問題がない状態・・・それが今の私の状況だ。それもこれも、この不思議なカードのお陰だと言える。

彰吾にお礼を言いたいな・・・。

この1週間、そう思っていたが、実は先週のあの深い交わりをした土曜日以降、彰吾に会えていないのだ。彼もインターンが始まったとやらでいろいろと忙しいというのがその理由だった。
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