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淫夢売ります
第54章 斜陽の楽園:繰り返す悪夢
なのに・・・なんで?
なんでこんなに落ち着かないのだろうか?

「あ、わ・・・私、資料の準備をしてきますね」
とにかくここを離れたいと、私は立ち上がろうとする。丁度その時、佐久本さんが『可愛い後輩を』と言いながら、頭を撫でるふりをしていたのだと思う。私が立ち上がった時に、彼の手のひらが私の頭に、ぽん・・・と触れた。

ゾクゾクゾクっ!

足元から言いしれぬ『何か』が立ち上ってきた。全身が総毛立ち、目の前が一瞬にして真っ赤に染まる。お腹の奥から湧き上がるほどのこれ・・・この感覚は・・・

絶望的なまでの嫌悪感・・・っ!

『きゃああああああああっ!!!』

なんだ・・・遠くで、誰かが叫んでいる。
大きな声でひたすらに。まるで気が狂ったかのように。

あれは誰・・・?
誰の声?

あれ?・・・この声・・・
これは、これは・・・

私の声だ!

心を押しつぶすほどの嫌悪感に気づいたのが先だったか、絶叫したのが先だったか定かではない。気づいたら私は錯乱したかのように叫び声を上げていた。

恐怖、嫌悪、怖気、不快、悲哀、絶望・・・

あらゆる負の感情が堰を切ったように一気に心に流れ込んでくる。それとともに、頭を駆け巡る意味不明な映像と音声の断片たち。

重く古めかしい木造りの扉
 彰吾の差し出してきたアヴァロンのカード
暗い部屋
 大勢の人の息遣い
天井に灯る小さな灯り
  三日月に歪む真っ黒な瞳
 ひどく憔悴した鏡の中の女性の顔
引き裂かれた枕
  誰かの叫びと笑い声

・・・そして・・・

無言で立ち尽くす、黒尽くめの男・・・

サングラスに隠されているにも関わらず、その瞳が深い悲しみをたたえているということだけが分かった。

なに・・・一体・・・

私の意識の欠片がかろうじて今起こったことを理解しようとし始めた時、ぐらりと世界が揺れ、四方八方から暗く陰鬱な闇となって押し寄せてきた。その途端、私のなけなしの意識は、瞬く間にそれに押しつぶされ、ぷつりとその機能を停止した。
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