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淫夢売ります
第54章 斜陽の楽園:繰り返す悪夢
☆☆☆
「さららちゃん、昨日は大丈夫だった?」

次の日、出社をした私を心配そうな顔をして有本さんが出迎えてくれた。昨日の様子から相当、心配をかけたらしい。大丈夫か、大丈夫じゃないかと言えば、早退途中に出会った男のことを考えれば大丈夫ではなかったのだが、それを言ったらもっと心配をかけてしまうと思ったので、黙っていることにした。

「う・・・うん。一晩寝たら落ち着いたよ」
「そうなんだ・・・ならいいんだけどさ」

同僚である有本さんだけではなく、上司の柊係長もだいぶ心配してくれているようで、今日は外回りの仕事から私を外してくれていたようだった。私としては、早く仕事を覚えて一人前になりたいという希望があったので、そこまで気を使ってくれなくても・・・とも思ったのだが、昨日心配かけた手前、その言葉は飲み込むしかなかった。

そんなわけで、この日、私はいつもはできない残務処理的なことをして半日を過ごすことになった。

しかし、私がそれなりに仕事をしていたからだろうか、昼休みになる頃には、私の体調を気にして声をかけてくる人はいなくなっていた。ただ、有本さんだけは心配をしてくれているようで、お昼を一緒に食べているときも『もう平気なの?』みたいに聞いてきてくれていた。

「うん・・・心配かけちゃったね」
「なんか、貧血なんかなって思ったけど・・・寝不足だったり?」
「いや、昨日とかは平気だったんだけどね」

そんな話から、数日前まで夢見が悪かった話と、彼氏にお守りもらったらよく眠れた、という話に発展する。

「へーすごいね、そのお守り。私も欲しいかも」
「うん、お守りって言っても、なんかタロットカードみたいな感じなんだけどね」
「悪夢を払うカードか・・・あ、そう言えばさ、それで思い出したんだけど、こんな都市伝説あるの知ってる?」

有本さんはコミュニケーションおばけみたいなところがあって、どんな人とも気兼ねなく話すことができるタイプの人間だ。ある意味、営業向きだと思うけど、その調整能力を買われて年明けから総務係に抜擢されていた。そんな彼女は社内外の噂話やときにはどこから仕入れたのかわからないような変わった噂話なんかにも精通していた。
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