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淫夢売ります
第53章 斜陽の楽園:幸せな日常
☆☆☆
唐突に目が覚めた。

見上げると白い天井に方形のシーリング。右手には柔らかな朝日を通すベージュのカーテンが掛かっている。

あれ?
私の・・・部屋?

不意に頬に何かがころりと流れるのを感じて、慌てて手をやると、そこは濡れていた。それが自身の目から溢れた涙だと気づくのに、少しだけ時間がかかった。

なんだろう・・・なにか、夢を見ていた気がする。

記憶を手繰り寄せてみる。

確か、薄暗くて小さいお店に入って、そこで女性に会った・・・。その女性と何かを話している。いや・・・私が何かを必死に訴えて・・・いた?

涙を流しながら何かを訴えている私。
その話を聞く、漆黒の目を持つ女性。

そんな断片的な情景が浮かんできた。

なんだろう?なんで泣いてるんだろう?

結局泣いている理由は思い出せなかった。起き上がってパジャマの袖で涙を拭うと、ベッドサイドにおいてある目覚まし時計を見た。偶然かもしれないが、目覚ましが鳴る3分ほど前だった。

なんとなく、目が覚めてしまった私は目覚ましを止め、起き上がることにする。

カーテンを開くと目に刺さるような明るい朝の光がサッと部屋に差し込んでくる。
今日は週の半ばの水曜日・・・今日もいい天気だ。爽やかな日差しを浴び、やる気をチャージする。

よし!・・・頑張ろう。

今日の予定を頭の中で組み立てていく。朝ごはんは昨日作ったシチューの残りとサラダでいいか。仕事では今日、先輩と一緒に営業先に行くことになっている。そろそろ独り立ちを促されているので、しっかりと学ばなければいけないなと思う。

あ、そうだ、夕方には彰吾と会う予定だった。彰吾とは高校の同級生で、大学生の時に告白されて付き合うことになった。当然同じ年なのだが、一浪している彼はまだ大学四年生だったりする。なので、こちらは社会人1年生の年度末というなかなかに忙しい毎日を過ごしているのに対して、彼は就職も決まり、卒論も提出済、就職先のインターンがないときは暇だというのだから、若干腹が立たないこともない。まあ、ついこの間、私が社員旅行に行っていたときに、彼は卒論で死にそうな顔をしていたので、そのへんはお互い様かもしれない。
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