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淫夢売ります
第53章 斜陽の楽園:幸せな日常
【斜陽の楽園】

ここは、どこだろう?

私は周囲を見回した。

どこかの住宅街だろうか。あたりはしんとしている。家々の窓から灯りが漏れているところを見ると、まだそれほど遅い時間というわけではないようだった。

振り向くと、少し先に高層ビル群がキラキラとした光を纏ってそびえ立っていた。その光景を見て、私はやっとここがどこか理解した。

そうか、ここ・・・新宿か。

何しに来たんだっけと思いながら、正面を見ると、そこには重々しい木造りの扉がある間口の狭い建物があった。扉には木の札がかかっているが、それは私の知らない外国語で書かれていて、読むことはできなかった。

それでも、私は自分がここを目指してきたのだと知っていた。ゆっくり扉を開く。
カランカランとベルの音が鳴る。どうやら木の扉にベルが付けられており、扉が動くとそれが来客を告げる仕組みになっているらしいのだ。

おずおずと中に入る。そこは不思議な空間だった。
店内は間口そのままに細長かった。ぼんやりとした灯りはついているものの、天井から幾重にも垂れ下がる黒いベールのような幕があるせいか、それほど明るくはなかった。ベールの合間からは銀色の金属板で作られた月や星、星座をモチーフにしたモビールが吊るされており、それもまた店内に不思議な雰囲気を添えるのに一役買っていた。

1月の夜だ、外はコートを着ていてもひんやりとしている。中は少しは暖かいかと思ったが、そんなことはなかった。もしかしたら外よりも寒いくらいかもしれない。

「お客様ですね・・・どうぞこちらに」

奥にかかっていた暗幕の向こうにも部屋があるらしく、そちらの方から女性の声がした。私がそっと幕を開くと、そこにはとてもきれいな長い髪を持った女性がひとり小さな机の向こうに座っていた。

「ようこそ・・・夢占モルフェへ」

そう言ってにこりと笑ったその女性の目は、どこまでも昏い・・・闇の色をしていた。
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