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淫夢売ります
第41章 淫らな選択:違う電車
「大丈夫ですよ・・・何も、恥ずかしがることはないです。見た夢を語るだけ・・・夢のお話ですから・・・」

くらりと頭の芯が痺れる。そして、いつの間にか私はユメノに先程見た夢の話を、ぽつりぽつりと聞かせていた。

「電車に乗っていて・・・その、満員電車で・・・目の前の男性が、スマホで官能小説のようなものを読んでいて・・・その写真が目に入ってきたんです。」

彼女は右手を顎に軽く当て、考えるような仕草をした。

「小説で、写真?」
「え・・・っと・・・その、挿絵・・・みたいな?」
「なるほど・・・その後はどうなりました?」

あと・・・
あの後のことを考えると、胸がまたドキドキと高鳴ってきてしまう。

「あ・・・」
「どう、なったんですか?」
ユメノの口調は厳しくはないけれども、なにか有無を言わせないところがあった。
「後ろから・・・その・・・触られたというか・・・」
「貴女様自身が?」
「・・・はい・・・」
膝の上にある手をぎゅっと握る。汗がまた、じっとりと出てきた。

「その時、何を考えていたかは覚えていますか?」
「あ・・・っと・・・イヤだ、とか、気持ち悪い、とか・・・嫌悪感でした」
「目の前の男性が見ていた小説については?」
「同じ・・・です。嫌悪感・・・」
「そうですか・・・。興味深い、夢ですね。ちょっと立ち入ったことをお伺いするので、答えたくなければいいのですが、そういったいわゆる痴漢にあったご経験は?」
「な、ないです!」

何故か強く言ってしまう。

「そうですか、わかりました。それから、最後にもう一つ」
そう言ってまたユメノは微笑む。例の妖艶な笑みだ。

「なぜ、貴女は自分が感じた感覚を『嫌悪感』と思ったのでしょう?
 感覚をどう捉えるかは、貴女の心・・・いや理性です。
 でも、直接それを感じたのは、貴女の身体・・・
 それは、本当に・・・」

嫌悪感だったのですか?

ドキン、と私の胸が大きく跳ねた。
ユメノの目がまた黒く歪む。

「知りたくはないですか?貴女の身体が本当に感じていたこと、それが何なのか?
 貴女の心で、知りたくはないですか?」

ゴクリと、息を呑む。
なぜか、私の身体が小刻みに震えていた。
そして、私はこの日、最後の選択をした。

コクリと、ユメノの問いに、頷いていたのである。
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