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淫夢売ります
第41章 淫らな選択:違う電車
黒いのだ。この店の照明が少し薄暗いからかもしれないが、ユメノの目は夜の闇をそのままたたえたような深い漆黒だった。その奥がまるで見えない、不思議な色合いに引き込まれそうになる。

「お客様?」

声をかけられ、はっと我に返る。いけない、さっきといい、今といい、すごくぼんやりしやすい。ユメノの目も、なんということはない普通の日本人の目をしていた。

「あ・・・えと、夢占いをしていただけると聞きましたので・・・」
「鑑定ですね。」

ユメノによると、夢占いは、占いというよりも、夢の内容からその人の深層心理にアクセスをする、ということであり、夢を見た人の心理鑑定やカウンセリングに近いとのことだった。料金は3000円だという。

「夢は古より、神様からのメッセージと言われていました。なので、その人の深層心理を反映させているだけではなく、その人が本当に望んでいること、これからどうなりたいか、も知ることができるんです」

そう言って微笑んだ。そういう意味では、未来につながる「占い」とも言えるのだそうだ。

私の本当の気持ち・・・
それにはとても興味があった。

幼い頃から、私は重要な場面では自分で選ぶことなどなかった。なので、私の選択、私の気持ちを知る機会はあまりなかったと言っていい。もしそれを知れるなら・・・その思いで私はユメノに料金を支払う。

「ありがとうございます。それでは、最近見た夢で記憶に残っているもの、または最近でなくても構わないのですが、印象に残っている夢はありますか?」

そう聞かれて、体が強張る。一番最近見て、一番印象深い夢と言えば・・・先程の「アレ」だった。でも・・・

あんな内容、人にはとてもじゃないけど言えない・・・

顔が熱くなり、私は俯いてしまった。ユメノは首を傾げて、こちらを見ていた。

「なにか、思い当たるのですか?もし、言いたくなかったら別の夢でも構いませんよ?」

そ、そうなの?

顔を上げると、ユメノと目が合った。そこにはあの漆黒があった。私の意識は一瞬の内にその目にとらわれる。

「あ・・あ・・・・」

にこりと、ユメノが笑った。真っ赤な唇。口角が上がり、笑う。そして、両の目が三日月のように歪んだ。それは、先程まで見せていた彼女の表情とは一変して、とても妖艶に見えた。
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