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淫夢売ります
第41章 淫らな選択:違う電車
☆☆☆
たしかに雨が降るという予報は正しかったみたいだった。空を仰いでも薄い雲が出ているだけなのだが、なんとなく、空気に雨の匂いが混じっていた。

そのお店は、新宿の裏側に当たるところ、住宅街の中にぽつんと現れた。

『Oniromancie Morphée』

重そうな木の扉に、そう書かれた木札がかかっていた。オレンジ色の照明が上から照らしているので営業中であることがわかる。ちょっと怖いなと思いはしたが、せっかくここまで着たのだし、という思いと、武内さんの言う『新しい発見』にもやや興味があったこともあり、私はその扉を開いた。

店の中は、薄暗く、天井から幾重にも黒色のビロードのような幕が垂れ下がっていた。その合間にこれも天井から星や月、星座などを象った銀のオブジェがぶら下がっていた。間口は狭く、細長い構造をしているようだ。狭い店内だけど、左手にはショーケースがあり、占いに使う道具なのだろうか、水晶玉やタロット・カード、後は何に使うのかよくわからないような木の板とか文字が彫られた石のようなものが置かれており、それぞれ値札がついていた。ケースの上には書籍や図版本のようなものもあった。いずれも占いに関係しているもののようだった。

「どうぞ・・・奥に」

店の奥の暗幕の向こうから女性の声がした。澄んだ声。若そうな印象だった。どうやら扉を開いたときに鳴ったベルの音で私の存在に気づいたようだった。

そっと暗幕を開いてみると、小さな机とその向こうに美しい女性が座っていた。

「はじめまして。ユメノと申します。夢占モルフェの主でございます」

抜けるような白い肌、黒い上質な絹のようなストレートの髪。漆黒の夜そのもののようなドレスのようなワンピースを着ていた。首元を包むベルベットのハイネック、そこから肩へと続く大胆なホルターネックが、白い肌とのコントラストでまた不思議な雰囲気を感じさせる。胸元には教会のステンドグラスを思わせるゴシック調のパターンが刻まれていた。

「本日は、どのようなご要件で?」

勧められるままにテーブルの前に用意された客用の椅子に腰掛ける。座ると、ユメノの顔が尚更近くに来て、少しどきりとした。

目が、すごく特徴的だった。
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