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淫夢売ります
第35章 鎖とドレス:心の鎖
☆☆☆
「次の方、どうぞ」

ふと気がつくと、僕はショッピングモールのような所に据えられた白い長椅子に腰を下ろしていた。背後から、誰かを読んでいる声が聞こえる。

「お次の方・・・ご予約の竹内様」
え?僕の名前?

呼ばれているのが自分だとわかり、僕は『はい』と答えて立ち上がる。白い壁で仕切られた店、入口を入ると受付と思しきブースに白い服を着た女性が立っていた。その服はナースか美容部員が着るような白衣を思わせる。
僕が進み出ると、受付の女性が笑顔を向けてきた。

「お待たせいたしました。お着替えの準備ができていますので、左手の更衣室にお進みください。」

左手・・・?
そちらに目を向けると、女性を示すマークがある。明らかに女性用の更衣室であることを示していた。ちなみに、ちらっと見ると右手は男性のマークがついている。あちらの間違いではないだろうかと考えた。

「えっと・・・あっちは女の人用では?」
遠慮がちに尋ねてみたのだが、受付の女性は、ブースの下にある何かを確認すると、
「いえ・・・お客様のご予約のコースでしたら、あちらで間違いないです。」
と言ってくる。なんとなく、急かされているような印象も受けたので、まあ店員がそう言うならと、首を傾げつつ『女性』のマークが付いた扉を開く。

更衣室と言っていたので、試着室的なところをイメージしていたのだが、扉の向こうは存外広かった。6畳ほどの空間が広がっており、入ってきた面から見て左側の壁から奥側にかけて、ずらりとドレスが吊り下げられていた。右手の壁には化粧台というのだろうか、大きな姿見と椅子、それから化粧品と思しきいくつかの瓶と刷毛のようなものが置かれたテーブルがあった。

明らかに、女性向け・・・だよな。

なんの気なしに吊り下げられたドレスのひとつを手にとってみる。ピンク色をベースとして、あちらこちらに樹の葉をモチーフとした模様がついたものだった。五分丈で、細身の作りだ。コスプレ用、とか、撮影用に作られた粗末なものではなく、生地も縫製もしっかりした実用ができるような水準のものだ。貸衣裳かなんかだろうか?

「気になるドレスがありますか?」

急に後ろから声をかけられてびっくりしてしまう。
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