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淫夢売ります
第35章 鎖とドレス:心の鎖
漆黒のストレート髪に白のパフスリーブのブラウス。胸元には黒色の大きめのリボンを結んでいる。スカートはふわっと広がる感じのこれもまた黒色のものだった。

モノトーンコーデというのだろうか、その服は彼女の白い肌、そして何よりも、ものすごく黒い瞳によく似合っていた。

瞳・・・黒い瞳。それにしてもあれは黒すぎるのではないだろうか?
まるで、夜の闇をそのまま切り取って貼り付けたような、深い、深すぎる黒に見える。

「お客様?」
暗幕をめくったまま立ち尽くしてしまっていた僕に、女が声をかけてきた。はっと気づくと、女の目は特に普通の感じだった。

見間違いだろうか。そう思い直して、僕は勧められるがままに丸椅子に座った。

「当店は初めてでらっしゃいますね?
 私はユメノと申します。このお店、モルフェの主です。」

若い女性だった。20代前半、もしかしたら10代後半かもしれない。とにかく、彼女がこの店の主、つまりは・・・

「占い師・・・さんですか?」
「ええ、そうです。当店は、夢占いが専門なんです。以降お見知りおきを」

ユメノによると、夢占いとは、夜に実際に見た夢からその人の運勢というか、どちらかというと深層心理を読み取る、みたいなことだそうだ。料金は3000円ほどだ、と説明された。

「ええと、変なことを尋ねるようですが、それって夢を覚えていないと・・・」
「覚えていらっしゃらないと少し難しいですね」
と言われてしまう。僕は、ここの所、疲れているせいか、泥のように眠るばかりで夢というのを全く覚えていなかった。

「ええと、すいません。よくシステムが分かってなくて、あの・・・僕はちょっと夢って覚えていなくて・・・」
「小さい頃見た夢、とかでもいいんですけど?」

最近の夢じゃなくてもいいのか。
だったら・・・。

別に夢占いにさほど興味があったわけではなかったが、せっかく入ったのだしというのと、なんとなく、ここまで説明させて何もしないで出ていく、というのが気が引けたというのもあり、僕は夢占いをお願いすることにした。

「では、夢占いのご注文で。わかりました。
 早速ですが、気になっている夢、印象に残った夢をお聞かせください」

この夢を見たのはいつのことだっただろうか?
大学を卒業するときだったかもしれない。
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