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淫夢売ります
第35章 鎖とドレス:心の鎖

☆☆☆
「課長、起きてくださいね?タクシーには行き先、言いましたからね?お金、払ってくださいよ?!」
結局30分ほど経っても起きる気配がなかったので、無理やり引き起こして店を出ることにした。店のマスターは『次来たときに浅井さんからもらうから、お代は大丈夫です』と言われてしまった。常連なのは確からしい。
そのままなんとか引きずるように表通りにつれていき、タクシーを止め、後部座席に放り込んだ。肩を揺すってなんとか家の住所を聞き出し、それをドライバーに告げる。ドライバーとしては、車内で吐かれては大変と思ったのか、だいぶ迷惑そうな顔をしていたが、なんとか拝み倒して乗せてもらうことができた。
人騒がせな課長を乗せたタクシーが夜の新宿に吸い込まれていく。呆然と見送った僕は、時計を見た。
もう、10時半を回っている。
僕も帰らないといけない。
そう思うのだが、足が重い。まるで、何かが足に絡みついているみたいだ。
なんだろう・・・いったい・・・
知らず、ため息が漏れる。
毎日同じだ。
朝起きて、会社に行って、一生懸命働いて、家に帰って、寝て、また起きて・・・
ひとつひとつ、間違えないように、社会的にも、倫理的にも
今日だってそうだ。課長が打ち上げにいこうと言った。
疲れてはいたし、行って楽しいかと言われるとそんなことはないと思った。でも、付き合うのが正しいと思ったから、僕は行った。
二次会に誘われたときも同じだ。帰るヤツがいたけど、お世話になってる課長の誘いを無下にするのは悪いことだと思った。
こうして酔いつぶれた課長をタクシーで送ってあげたことも・・・。
損している、と同僚は言うかもしれない。でも、それぞれの場面で僕は、正しい選択をした、はずだった。
なのに、なんでこんなに心が重たくなるんだろう。
まるで・・・これは、鎖・・・みたいだ。
そんなことを考えて、しばし呆然としてしまったが、ずっと立ち尽くしているわけにもいかない。
僕は重い足を引きずって新宿駅を目指して歩き始めた。
だけど、そんなふうにぼけっと歩いていたせいか、なんだかよくわからない裏道に入ってしまった。こっちのほうが近道だとでも思ったのだろうか。そんなに飲んではいないと思っていたが、自分も相当酔っ払っているようだった。
「課長、起きてくださいね?タクシーには行き先、言いましたからね?お金、払ってくださいよ?!」
結局30分ほど経っても起きる気配がなかったので、無理やり引き起こして店を出ることにした。店のマスターは『次来たときに浅井さんからもらうから、お代は大丈夫です』と言われてしまった。常連なのは確からしい。
そのままなんとか引きずるように表通りにつれていき、タクシーを止め、後部座席に放り込んだ。肩を揺すってなんとか家の住所を聞き出し、それをドライバーに告げる。ドライバーとしては、車内で吐かれては大変と思ったのか、だいぶ迷惑そうな顔をしていたが、なんとか拝み倒して乗せてもらうことができた。
人騒がせな課長を乗せたタクシーが夜の新宿に吸い込まれていく。呆然と見送った僕は、時計を見た。
もう、10時半を回っている。
僕も帰らないといけない。
そう思うのだが、足が重い。まるで、何かが足に絡みついているみたいだ。
なんだろう・・・いったい・・・
知らず、ため息が漏れる。
毎日同じだ。
朝起きて、会社に行って、一生懸命働いて、家に帰って、寝て、また起きて・・・
ひとつひとつ、間違えないように、社会的にも、倫理的にも
今日だってそうだ。課長が打ち上げにいこうと言った。
疲れてはいたし、行って楽しいかと言われるとそんなことはないと思った。でも、付き合うのが正しいと思ったから、僕は行った。
二次会に誘われたときも同じだ。帰るヤツがいたけど、お世話になってる課長の誘いを無下にするのは悪いことだと思った。
こうして酔いつぶれた課長をタクシーで送ってあげたことも・・・。
損している、と同僚は言うかもしれない。でも、それぞれの場面で僕は、正しい選択をした、はずだった。
なのに、なんでこんなに心が重たくなるんだろう。
まるで・・・これは、鎖・・・みたいだ。
そんなことを考えて、しばし呆然としてしまったが、ずっと立ち尽くしているわけにもいかない。
僕は重い足を引きずって新宿駅を目指して歩き始めた。
だけど、そんなふうにぼけっと歩いていたせいか、なんだかよくわからない裏道に入ってしまった。こっちのほうが近道だとでも思ったのだろうか。そんなに飲んではいないと思っていたが、自分も相当酔っ払っているようだった。

