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淫夢売ります
第33章 仮面の夜会:ギニョール
☆☆☆
固いベッドのようなところで目が覚めた。

「大丈夫ですか?お水、飲みますか?それとも気つけにアルコールでも?」
ファイが私のことを覗き込んでいた。差し伸べてくれた手を掴んで自分の体を起こした。

どうやら、私は気を失ってしまっていたらしい。そして、『こちら』で意識がなくなると、『向こう』の自分が目を覚ます・・・そういう仕組みのようだ。

「大丈夫です・・・。ありがとうございます」
確かにのどが渇いていたので、飲み物をもらいたかった。そう言うと、ファイが細長いシャンパングラスに発泡する赤ワインのようなものを入れて持ってきてくれる。

飲んでみると、冷たくてスッキリとした味わいだった。赤ワインではないみたいだけど。
「キールです。少し酸味があって、気分が良くなるでしょう?」
残りを一気に飲み干す。私は元来それほどお酒に強くはない。先ほどマティーニを一杯飲んで、今、キールを一杯もらった。たぶん『向こう』の私なら、この時点でかなり酔いが回ってしまうことだろう。

しかし、今の私は、たしかに『酔い』を感じるけれども、ふらつきや、ましてや気持ち悪さなどは感じない。むしろふわふわとして心地が良い。
それは、ここが夢の世界だからかもしれない。

「どうしますか?もう少し休みますか?それとも、今日は、無理せず帰られますか?」
案内はまだ途中だけど、と言う。

ファイはあくまで優しい。その優しさに気を許してしまった、というのがあるかもしれない。私は、案内をしてほしいと、言ってしまっていた。
「では、二階を案内しましょう」
ファイによると、二階には『シャンブル』といわれる個室があるという。シャンブルは予約制で、一階のジュエのカウンターで空き状況の確認や予約ができるそうだ。

「シャンブルには、『ヴィトレ』と『セクレ』の二種類があります。ああ、あそこ、ちょうどいい、ヴィトレに誰か入っているみたいですよ」

ヴィトレ・・・?ガラス張り?

どういう意味だろう、と思っていた私の疑問はすぐに氷解した。部屋の扉の左右に横に細長い窓がついているのだ。窓の前にはソファとローテーブルがあり、座ってリラックスしながら窓を通して部屋の中を眺められるようになっている。
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