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淫夢売ります
第33章 仮面の夜会:ギニョール
寝苦しく感じて、目が覚めた。

思わず体を起こしてしまう。心臓が、まだドキドキしていた。部屋は暗く、一瞬自分が何処にいるかわからなくなる。だけど、すぐに、ここが家の寝室であることが分かった。

左に目をやると、隣のベッドで夫が軽い寝息を立てていた。ベッドサイドのテーブルの上、夜光の時計を見ると、時刻は午前2時30分を指していた。

鼓動を落ち着かせようと、胸に手を当てる。
じっとりと身体が汗ばんでいるのが分かった。

次いで、顔に手をやった。もちろん、そこにはなにもない。
マスクなど、つけてはいなかった。

あれは・・・夢?
夢にしては物凄くリアルだった。先程まで本当にあの店にいたかのような。まるで違う世界で、違う自分になっていたかのような。そんな現実味のある感覚。

すっと、パジャマの上から秘部に触れると、ひやりとした感じがした。
言わずと知れている。私の女の部分が熱く火照り、じっとりと濡れているのだ。それを意識すると、また、とぷんと淫蜜が吐き出されたような気がした。

着替えなきゃ・・・。

そう思ったとき、私は思い出した。
そうだ、枕の下・・・。
寝る前に枕の下にモルフェのカードを入れていたのだ。手探りでそれを取り出す。
闇に目が慣れてきたので、カードの図案も薄ぼんやりと見えるようになっていた。

中央に薄青色のロングドレスを着た女性が立っている。その周りを三人の男性が囲んでいた。男性たちは女性に傅き、女性はそのうちのひとりに手の甲を差し伸べている。ひとりの男性がその手を取り、キスをしようとしている・・・そんな図案だった。

あ・・・!

変な話だが、この時初めて気がついた。男性も女性も、仮面をつけている。
言ってみれば、これは『仮面を付けた女性に傅く男性たち』とでもいうのがふさわしいような図案のカードだったのだ。

仮面は、夢の中のマスクを彷彿とさせた。
そして、よく思い出してみると、夢の中の私は、この図案の女性が着ているようなロングドレスを身にまとっていた。
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