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The Bitch (ザ、ビッチ)
第8章 エピローグ  『わたしの好きに...』
 48

「じ、実は…え、映画館から、いました…」

「え…」

 それは、驚きの言葉―――

「あ、あの、チケット券売機から…
 見てましたっ…す……」
 
「す、ストーカー…じゃん……」

 精一杯の、抗い…

「は、はい、そう…なんす……」

「券売機の、後ろにいたってこと?」

「は、はい…」

「もう…完全に、ストーカーじゃん……」

 だけど、苛立ち、嫌悪感は、全くない…

「は、はい…な、なんか…声が…掛けられなくて…」

 むしろ、嬉しい…かも…

「な、なんで…」

「あ、いや…だって…」

 和哉にしてみれば、それはそうだろう…

 あんな、突然に、拒否られ…

 いや、彼にしたら、何の前触れもなく、フラれたようなものだ―――

 いや…

 わたしは、和哉を、フッたんだ。

 ううん、違う…

 麻耶さんに、譲ったんだ―――


「……だよね、そうは………」

「あ、は、はい…
 なかなか、声が、掛けられなくってぇ…」

「そうよねぇ…」
 その気持ちは、痛いほど分かる。

「…で、い、今……」

「……ってことはさぁ…」
 
 あれから、三ヶ月…

 色々あったけど、時の流れは…

 心も、流してくれるみたい……

「…ってことはさぁ…
 映画館からここまでって、ことよねぇ…」

 自分でも、驚くほど、心が軽い。

「あ…は、はい……」

「ふぅん…それってさぁ……」

「あ、はい、そうなんす……」

 あれから、何度か…
 和哉との、不意な遭遇を、想定したことがあった。

「え……」

「あ、は、はい…」

 でも、あの頃は…

 何度考えても、想像しても…

「うわ、和哉ぁ…
 それ、マジ、ヤバい、ストーカーじゃん…」

 こんな風に、自然に、軽く、話せるはずがない…
 そう、思っていた。

「あ、い、いや………」

「うん、マジで?」

「め、面目ないっす……」
 
 それは、きっと、変わらぬ和哉の、おかげなのだろう…

「ふ……」

 この、漏れた笑みで…
 わたしの、心は、完全に軽くなった。

 いや、なんか…

 今までの自分が…

 バカみたいに、思えてきた。

「あ、ゆ、悠里さんが、全然変わってなくてぇ…
 い、いや…
 前より、き、きれいに……」

「え…」

 この言葉で…

 いつものわたしが、戻ってきた―――
 
 
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