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千一夜
第57章 第八夜 island 王道
「その戦いには勝ったんですか?」
私はふざけてそう訊ねた。
「うん~ん、引き分けと言いたいところなんですが……やはりあの戦いは負けですね」
河田は真剣にそう答えた。
「負け?」
「負けです。負けました」
「それはつまり完走できなかったということですか?」
「完走はしました。でも負けです」
「すみません。国道49号線ってどこからどこまで続いているんですか?」
「福島県のいわき市から新潟県の新潟市です。距離にして250㌔くらいかな。太平洋から日本海までというルートです」
「250㌔を二十四時間かけて?」
「いや、コースにはアップダウンの激しい所がないので、走行時間は15時間前後になるのではないかと予想しました。平均時速17㌔くらいになります」
「時速17㌔……」
はっきり言う。私にはその時速17㌔が速いのかそれとも遅いのかわからない。私はランドナーにもロードバイクにも乗ったことがない。せいぜいママチャリ。それだって、今自分は時速何キ㌔で走っているのかなんて考えながら走ったことなど一度もない。
「ランドナーはスピードを求めるロードバイクと違って重い自転車なんです。早く走りたいと思ってペダルを踏んで回しても、思うように自転車は前には進みません」
「……」
軽いロードバイクで走ると言う選択肢は河田にはなかったのだろう。一人NSRは相棒と一緒と河田は決めていたのだ。
「楽勝だと思ったんですが……」
「あの、完走したのに負けって、どうしてそうなるんですか?」
「途中死にかけたんです」
「はっ? 死にかけたって……どういうことですか?」
「一人NSRの決行日は九月の最初の日曜日。出発時間は早朝午前三時でした。いわき市から新潟市を目指してスタートしたんです。ここで予想外のことが起きました。九月って暦の上では秋です。でも秋なのに猛暑。補給食も水も準備は万端でした。でも予想外の暑さで水の消費が早くなったんです。沿道にコンビニがあれば水を買ってたんですが、新潟県に入ってしばらく走ってもコンビニが見つからなかったんです。喉が渇く、そのとき自分が脱水症状であると言うことを自覚しました。次に体に力が入らない、脱水症状の進行を認めなければなりません。そしてとうとう意識が朦朧としてきたんです。ジエンドです」
「ジエンドって死んじゃうんですよ」
「ははは」
「笑い事じゃないですよ」
私はふざけてそう訊ねた。
「うん~ん、引き分けと言いたいところなんですが……やはりあの戦いは負けですね」
河田は真剣にそう答えた。
「負け?」
「負けです。負けました」
「それはつまり完走できなかったということですか?」
「完走はしました。でも負けです」
「すみません。国道49号線ってどこからどこまで続いているんですか?」
「福島県のいわき市から新潟県の新潟市です。距離にして250㌔くらいかな。太平洋から日本海までというルートです」
「250㌔を二十四時間かけて?」
「いや、コースにはアップダウンの激しい所がないので、走行時間は15時間前後になるのではないかと予想しました。平均時速17㌔くらいになります」
「時速17㌔……」
はっきり言う。私にはその時速17㌔が速いのかそれとも遅いのかわからない。私はランドナーにもロードバイクにも乗ったことがない。せいぜいママチャリ。それだって、今自分は時速何キ㌔で走っているのかなんて考えながら走ったことなど一度もない。
「ランドナーはスピードを求めるロードバイクと違って重い自転車なんです。早く走りたいと思ってペダルを踏んで回しても、思うように自転車は前には進みません」
「……」
軽いロードバイクで走ると言う選択肢は河田にはなかったのだろう。一人NSRは相棒と一緒と河田は決めていたのだ。
「楽勝だと思ったんですが……」
「あの、完走したのに負けって、どうしてそうなるんですか?」
「途中死にかけたんです」
「はっ? 死にかけたって……どういうことですか?」
「一人NSRの決行日は九月の最初の日曜日。出発時間は早朝午前三時でした。いわき市から新潟市を目指してスタートしたんです。ここで予想外のことが起きました。九月って暦の上では秋です。でも秋なのに猛暑。補給食も水も準備は万端でした。でも予想外の暑さで水の消費が早くなったんです。沿道にコンビニがあれば水を買ってたんですが、新潟県に入ってしばらく走ってもコンビニが見つからなかったんです。喉が渇く、そのとき自分が脱水症状であると言うことを自覚しました。次に体に力が入らない、脱水症状の進行を認めなければなりません。そしてとうとう意識が朦朧としてきたんです。ジエンドです」
「ジエンドって死んじゃうんですよ」
「ははは」
「笑い事じゃないですよ」

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