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千一夜
第57章 第八夜 island 王道
腹が立った。死にそうな状況を河田は面白そうに話している(もっとも過去の出来事なので、思い出話のように話すことが悪いわけではないのだが)。
「計算を間違えたんです」
「東大生でも計算を間違えることがあるんですね」
皮肉を言ってやった。
「工藤さん、そこで問題です。僕の最大の計算間違いは何だったのでしょうか?」
河田は腹を立てることなく、私に問題を出した。
「暑さと、食料と水の消費の計算。それに付け加えるなら、国道49号線が河田さんにとって初めての道だったから。違いますか?」
本当は「あなたが馬鹿だから」と言いたかったが、差しさわりのない答えに私は差し替えた。
「いい線ついてますね」
「……」
何がいい線ついているだ!アホ!と心の中で毒づいた。
「それでは正解発表です。僕の最大の過ちは……一人でNSRをしたことです」
「でも一人で走ることは決めてたんですよね? だったら」
「ちちち」
河田は、人差し指を立ててそれを左右に振らなかったが、私は河田の頬をグーで殴りたかった。何が「ちちち」だ!もう一回アホ!
「……」
「自転車部R班では、僕はいつも誰かと一緒に走っていました。だから僕に異変があれば誰かが助けてくれる。もちろん僕も誰かの異変に気付けば、その誰かを助ける。あのとき僕は自分の異変に気付いていました。でも水を分けてくれる仲間がいなかった。そう言う窮地を僕は乗り越える術を知らなかったんです」
「それで、河田さんはどうされたんですか?」
このままでは河田の“いい話”になってしまいそうな気がした。ならば河田はどうやってその絶体絶命の場面から逃れることが出来たのか。
「49号沿いの田舎の風景の中にバス停を見つけたんです。そのバス停は大人が三人くらい座れるベンチがあって、雨に濡れないように屋根もついてて、まぁ、おもちゃのような小屋ですね」
「そこで休んだ?」
「休んだと言うより、倒れ込んだと言った方が正しいですね」
「倒れこんだ?」
「そのベンチに横になった瞬間、気を失いました」
「気を失った? そんな状態ならベンチに横になっても危険ですよね?」
「その通りです。でもそんな地獄の中でヒーローが現れたんです」
「ヒーロー……ですか?」
「はい、ヒーローです」
「あの……そのヒーローってどんな感じの人だったんですか?」
「ききたいですか?」
「はい」
「計算を間違えたんです」
「東大生でも計算を間違えることがあるんですね」
皮肉を言ってやった。
「工藤さん、そこで問題です。僕の最大の計算間違いは何だったのでしょうか?」
河田は腹を立てることなく、私に問題を出した。
「暑さと、食料と水の消費の計算。それに付け加えるなら、国道49号線が河田さんにとって初めての道だったから。違いますか?」
本当は「あなたが馬鹿だから」と言いたかったが、差しさわりのない答えに私は差し替えた。
「いい線ついてますね」
「……」
何がいい線ついているだ!アホ!と心の中で毒づいた。
「それでは正解発表です。僕の最大の過ちは……一人でNSRをしたことです」
「でも一人で走ることは決めてたんですよね? だったら」
「ちちち」
河田は、人差し指を立ててそれを左右に振らなかったが、私は河田の頬をグーで殴りたかった。何が「ちちち」だ!もう一回アホ!
「……」
「自転車部R班では、僕はいつも誰かと一緒に走っていました。だから僕に異変があれば誰かが助けてくれる。もちろん僕も誰かの異変に気付けば、その誰かを助ける。あのとき僕は自分の異変に気付いていました。でも水を分けてくれる仲間がいなかった。そう言う窮地を僕は乗り越える術を知らなかったんです」
「それで、河田さんはどうされたんですか?」
このままでは河田の“いい話”になってしまいそうな気がした。ならば河田はどうやってその絶体絶命の場面から逃れることが出来たのか。
「49号沿いの田舎の風景の中にバス停を見つけたんです。そのバス停は大人が三人くらい座れるベンチがあって、雨に濡れないように屋根もついてて、まぁ、おもちゃのような小屋ですね」
「そこで休んだ?」
「休んだと言うより、倒れ込んだと言った方が正しいですね」
「倒れこんだ?」
「そのベンチに横になった瞬間、気を失いました」
「気を失った? そんな状態ならベンチに横になっても危険ですよね?」
「その通りです。でもそんな地獄の中でヒーローが現れたんです」
「ヒーロー……ですか?」
「はい、ヒーローです」
「あの……そのヒーローってどんな感じの人だったんですか?」
「ききたいですか?」
「はい」

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