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千一夜
第57章 第八夜 island 王道
同い年と言っても、河田は名門H高校の一年生。漫画の主人公は高校受験に失敗して日本一周。
二人に共通するところはどこを探してもない。しかし、未来のエリートは、漫画の主人公に触発されて自転車に乗り始めた。
「日本一周の真似事はしましたが、残念ながら僕はまだ自転車で日本一周はしていません」
「……」
残念なんて言う必要はない。普通の人間は自転車で日本一周なんてしない。日本一周を考えることもしないだろう。
「僕の高校には自転車部みたいなものがなくて、だから旅が出来そうな写真部に入ったんです」
「そして八海山ですね、ふふふ」
八海山を登ったのは嘘ですと告白した河田の顔が浮かんだ。
「いやぁ何だかめちゃくちゃ恥ずかしいです」
「大学は……河田さん、東大ですよね?」
ためらいはあったが、私は恐る恐るそう訊ねた。
「ええ、……あれ? 僕そんなこと言ったかな」
河田がちらりと私の方の顔を向けた。
「東京大学自転車部R班ですよね?」
「何で知っているんですか? 僕が自転車部のR班だなんて工藤さんには言ってないですよね?」
驚いた河田がもう一度私に顔を向けた。
「ごめんなさい。河田良和で検索しました。河田さん凄いです。若いのにもうWikipediaで紹介されているんですから」
「頼んだ覚えはないんですが、まぁネガティブな部分は無視してください」
「ふふふ、ネガティブな部分なんて一つもなかったですよ」
「それはそれで怪しいんだよな」
「ふふふ」
「今はそう言う時代なんですよね」
「そう言う時代?」
「何でも簡単に手に入る。確かに便利です。地球の裏側にいても、スマホで河田良和と打ち込めば僕の経歴を見ることができる。どこかで撮られた僕の写真なんかも、僕の意思には関係なくネットにアップされているかもしれない。まぁ、どこかですれ違っても僕なんかの顔では振り返られることなんてないでしょうが」
「嫌ですか?」
「嫌です。僕はタレントではありませんから」
「じゃあ河田さんは何者ですか?」
意地悪な質問を私は河田にぶつけた。
「株式会社○○インターネットの専務取締役です」
河田はきっぱりとそう言った。
「……」
後悔先に立たず。
「あっ、一度だけ死にかけたことがあります」
「はっ?」
河田がいきなりそう言ったので私は驚いた。
「NSRです」
「NSR?」
「はい、NSRです」
二人に共通するところはどこを探してもない。しかし、未来のエリートは、漫画の主人公に触発されて自転車に乗り始めた。
「日本一周の真似事はしましたが、残念ながら僕はまだ自転車で日本一周はしていません」
「……」
残念なんて言う必要はない。普通の人間は自転車で日本一周なんてしない。日本一周を考えることもしないだろう。
「僕の高校には自転車部みたいなものがなくて、だから旅が出来そうな写真部に入ったんです」
「そして八海山ですね、ふふふ」
八海山を登ったのは嘘ですと告白した河田の顔が浮かんだ。
「いやぁ何だかめちゃくちゃ恥ずかしいです」
「大学は……河田さん、東大ですよね?」
ためらいはあったが、私は恐る恐るそう訊ねた。
「ええ、……あれ? 僕そんなこと言ったかな」
河田がちらりと私の方の顔を向けた。
「東京大学自転車部R班ですよね?」
「何で知っているんですか? 僕が自転車部のR班だなんて工藤さんには言ってないですよね?」
驚いた河田がもう一度私に顔を向けた。
「ごめんなさい。河田良和で検索しました。河田さん凄いです。若いのにもうWikipediaで紹介されているんですから」
「頼んだ覚えはないんですが、まぁネガティブな部分は無視してください」
「ふふふ、ネガティブな部分なんて一つもなかったですよ」
「それはそれで怪しいんだよな」
「ふふふ」
「今はそう言う時代なんですよね」
「そう言う時代?」
「何でも簡単に手に入る。確かに便利です。地球の裏側にいても、スマホで河田良和と打ち込めば僕の経歴を見ることができる。どこかで撮られた僕の写真なんかも、僕の意思には関係なくネットにアップされているかもしれない。まぁ、どこかですれ違っても僕なんかの顔では振り返られることなんてないでしょうが」
「嫌ですか?」
「嫌です。僕はタレントではありませんから」
「じゃあ河田さんは何者ですか?」
意地悪な質問を私は河田にぶつけた。
「株式会社○○インターネットの専務取締役です」
河田はきっぱりとそう言った。
「……」
後悔先に立たず。
「あっ、一度だけ死にかけたことがあります」
「はっ?」
河田がいきなりそう言ったので私は驚いた。
「NSRです」
「NSR?」
「はい、NSRです」

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