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千一夜
第57章 第八夜 island 王道
河田の相棒のランドナー。
今更だがランドナーってどんな自転車なのだろうか。街中でよく見かけるあの自転車(ロードバイクというものらしい)? でもあの自転車に乗っている人たちは、ほっそりとした体形の人が多い。だから私はこう思っていた。ダイエットするときはあの自転車に乗るのが一番だと。
だが、河田は背が高くて(河田によると183㎝だと言っていた)、体重も70㌔くらいありそうだ(河田から体重のことは聞いていない)。
つまりそんな河田が、私が街中で見かける自転車に乗ったりでもしたら、あの自転車のフレームや細いタイヤは河田を支えることができないのではないか(もちろん体重100㌔の人がロードバイクに乗ってもバイクは壊れたりはしない)。
こんな私の疑問を解決するのには時間はかからない。“検索”だ。トートバックからスマホを取り出して“ランドナー”と打ち込めば、私が知りたい情報は瞬間で手に入る。でもトートバックの中に手を入れるのには少しためらいがあった。
便利さはときとして雰囲気を台無しにする。河田と話していた方が私は楽しい。
「自転車と共に父から譲ってもらったものがあるんです」
「……」
「何だと思います?」
「……参考書とか問題集ですか?」
河田が進学した高校は都立H高校。都立の中でも超がつく進学校だ。残念ながら思いつくものはそれしかなかった。
「ははは」
河田が豪快に笑う。
「そんなにおかしいですか?」
「笑ったりしてごめんなさい。僕が父から貰ったものは参考書や問題集とは真逆の物です」
「真逆?」
「はい、真逆です。でも工藤さんはいい線いってますよ。真逆のものは紙ですから」
「……もしかしたら漫画?」
まさかとは思ったが、私そう答えた。
「ピンポーン!」
「……」
こんな風におどける男が、潰れそうな会社を立て直した。そう言う情報は河田本人からではなく、私は加藤から教えてもらった。普通なら、今いる会社は自分が再生させたと自慢したいはずなのだが、河田は蘇らせた会社について一言も話さない。
それどころかこれから少し後、河田は笑いをまじえながら生死を彷徨った自転車旅行のことを話し始める。
「どんな漫画だと思います?」
「自転車ですよね?」
「その通り。めちゃくちゃ古い漫画です」
「その漫画のタイトルは?」
「荘司としお先生の作品“サイクル野郎”です」
今更だがランドナーってどんな自転車なのだろうか。街中でよく見かけるあの自転車(ロードバイクというものらしい)? でもあの自転車に乗っている人たちは、ほっそりとした体形の人が多い。だから私はこう思っていた。ダイエットするときはあの自転車に乗るのが一番だと。
だが、河田は背が高くて(河田によると183㎝だと言っていた)、体重も70㌔くらいありそうだ(河田から体重のことは聞いていない)。
つまりそんな河田が、私が街中で見かける自転車に乗ったりでもしたら、あの自転車のフレームや細いタイヤは河田を支えることができないのではないか(もちろん体重100㌔の人がロードバイクに乗ってもバイクは壊れたりはしない)。
こんな私の疑問を解決するのには時間はかからない。“検索”だ。トートバックからスマホを取り出して“ランドナー”と打ち込めば、私が知りたい情報は瞬間で手に入る。でもトートバックの中に手を入れるのには少しためらいがあった。
便利さはときとして雰囲気を台無しにする。河田と話していた方が私は楽しい。
「自転車と共に父から譲ってもらったものがあるんです」
「……」
「何だと思います?」
「……参考書とか問題集ですか?」
河田が進学した高校は都立H高校。都立の中でも超がつく進学校だ。残念ながら思いつくものはそれしかなかった。
「ははは」
河田が豪快に笑う。
「そんなにおかしいですか?」
「笑ったりしてごめんなさい。僕が父から貰ったものは参考書や問題集とは真逆の物です」
「真逆?」
「はい、真逆です。でも工藤さんはいい線いってますよ。真逆のものは紙ですから」
「……もしかしたら漫画?」
まさかとは思ったが、私そう答えた。
「ピンポーン!」
「……」
こんな風におどける男が、潰れそうな会社を立て直した。そう言う情報は河田本人からではなく、私は加藤から教えてもらった。普通なら、今いる会社は自分が再生させたと自慢したいはずなのだが、河田は蘇らせた会社について一言も話さない。
それどころかこれから少し後、河田は笑いをまじえながら生死を彷徨った自転車旅行のことを話し始める。
「どんな漫画だと思います?」
「自転車ですよね?」
「その通り。めちゃくちゃ古い漫画です」
「その漫画のタイトルは?」
「荘司としお先生の作品“サイクル野郎”です」

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