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千一夜
第57章 第八夜 island 王道
「河田さんはお車を持ってらっしゃらないんですか?」
金持ちの男の中にも、河田のように高級車に目を向けない男がいる。
「はい」
「会社にはどうやって行かれるんですか?」
「雨の日以外は自転車ですね」
「自転車!」
「小雨程度なら自転車に乗って会社に行きますよ」
「……」
小雨とか大雨とかそう言う問題じゃない。上場会社の役員が自転車で会社に行く……。
「変ですか?」
「変じゃないけど……河田さんが自転車で会社に向かっている姿が想像できないですね」
「ははは」
河田は豪快に笑った。
そうだ、きっとこだわりのある自転車なのだろう。河田の自転車は何百万もするのかもしれない。
「どんな自転車なんですか?」
「Nationalの自転車です」
「National?」
「ああ、今はPanasonicですね」
「Panasonicが自転車を作っているんですか?」
「作ってますよ」
「……」
今Panasonic……NationalはPanasonicの旧社名。河田はPanasonicという社名をあえて使わなかった。それはつまり……Nationalの自転車ってもしかしたら古い?
「1975年製のNationalのランドナーです」
「1975年!ということは五十年以上前の自転車なんですか?」
私は驚いた。
「はい。もっともその自転車を買ったのは僕ではなくて父なんです。父が自分のために買った中古の自転車です」
「お父様が?」
「僕が高校に入学したときに、父から入学祝として父のランドナーを貰いました」
「河田さんは今でもその自転車を乗っておられるんですね。失礼ですがその他には」
若い成功者が、五十年以上前の自転車だけで満足しているわけがない。
「自転車は一台だけです」
「半世紀前の自転車が一台だけ?」
「そういうことになりますね」
「……」
見て見たい。河田が通勤のために乗っている五十年以上前の自転車。
「工藤さん、見たいですか?」
「はい」
私は即答した。
「今でも年に二度くらいタイヤとチューブは自分で交換しています。オリジナルのパーツなんてもうないんですが、僕の自転車をいつも最高の状態にしてくれる自転車屋さんがあるんで助かってます。綺麗な自転車ですよ。そうだ、今度の日曜、僕の家に来てください。僕の相棒を紹介します」
「……」
自転車が相棒……。
金持ちの男の中にも、河田のように高級車に目を向けない男がいる。
「はい」
「会社にはどうやって行かれるんですか?」
「雨の日以外は自転車ですね」
「自転車!」
「小雨程度なら自転車に乗って会社に行きますよ」
「……」
小雨とか大雨とかそう言う問題じゃない。上場会社の役員が自転車で会社に行く……。
「変ですか?」
「変じゃないけど……河田さんが自転車で会社に向かっている姿が想像できないですね」
「ははは」
河田は豪快に笑った。
そうだ、きっとこだわりのある自転車なのだろう。河田の自転車は何百万もするのかもしれない。
「どんな自転車なんですか?」
「Nationalの自転車です」
「National?」
「ああ、今はPanasonicですね」
「Panasonicが自転車を作っているんですか?」
「作ってますよ」
「……」
今Panasonic……NationalはPanasonicの旧社名。河田はPanasonicという社名をあえて使わなかった。それはつまり……Nationalの自転車ってもしかしたら古い?
「1975年製のNationalのランドナーです」
「1975年!ということは五十年以上前の自転車なんですか?」
私は驚いた。
「はい。もっともその自転車を買ったのは僕ではなくて父なんです。父が自分のために買った中古の自転車です」
「お父様が?」
「僕が高校に入学したときに、父から入学祝として父のランドナーを貰いました」
「河田さんは今でもその自転車を乗っておられるんですね。失礼ですがその他には」
若い成功者が、五十年以上前の自転車だけで満足しているわけがない。
「自転車は一台だけです」
「半世紀前の自転車が一台だけ?」
「そういうことになりますね」
「……」
見て見たい。河田が通勤のために乗っている五十年以上前の自転車。
「工藤さん、見たいですか?」
「はい」
私は即答した。
「今でも年に二度くらいタイヤとチューブは自分で交換しています。オリジナルのパーツなんてもうないんですが、僕の自転車をいつも最高の状態にしてくれる自転車屋さんがあるんで助かってます。綺麗な自転車ですよ。そうだ、今度の日曜、僕の家に来てください。僕の相棒を紹介します」
「……」
自転車が相棒……。

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