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千一夜
第56章 第八夜 island 二本の電話
「沈みかけた船に必要な物って何だと思う?」
「沈みかけた船ってもうボロボロなんですよね? 必要なものと言っても……」
沈みかけた船がもう一度浮かび上がるなんてあり得ない。
「何もしなかったら確実に沈没するのよ。債務超過の会社なんて沈みかけた船と同じよ。違うわ、もっと最悪かもね、でもね、対処法は同じなの」
「船と会社が?」
「そう、会社と船は同じ。だから債務超過の会社も沈みかけている船も対処法は同じなの」
「……」
沈みかけた船を想像すると怖くなる。そんな船になんて乗りたくない。
「実はとても簡単なことなの。沈みかけているんだから余分な荷物を海や川に放り投げる。重い荷物を載せたままじゃ船は浮かび上がらないでしょ。あっ、勘違いしないで、会社は余計なものを海や川に捨てたりしないから」
「……」
「河田さんが捨てたものって何だと思う?」
「まさか社員じゃないですよね?」
「うん~ん、社員……じゃないわね」
「わかりません」
本当にわからない。会社が捨てるものって何だろう。
「河田さんが捨てたものは会社よ」
「はっ?」
会社が会社を捨てるとはどういうことなのか。
「会社が上場すると、ほんのりと甘い香りが経済社会に漂うのよ。その香りに引き寄せられる人間たちがいるわけ。彼らはこんな風に上場企業に囁くの『いい会社があるんだけど』とね。つまり買収案件を持ち込んでくるわけ」
「買収案件?」
「会社を買ってくれということ。ところが甘い香りを漂わせている会社は、魔法使いから魔法にかけられているのよ。だからついつい余計なものまで買ってしまう。河田さんの会社もそうだったのよ。本業とは全く関係のない会社にまで手を出した。買ったはいいが、何の利益ももたらしてくれない。それどころか赤字を埋めなければならない羽目になる。河田さんは買収した会社をすべて手放したわ」
「……」
「さて、船は軽くなりました。でもまだ沈没する可能性がある。どうする? 何が必要?」
「ひょっとしたら新しい燃料だとか」
「その通りよ。燃料がなければ船は動かないわ。会社にとっての燃料とは何?」
「お金……ですか?」
「正解。でも沈んでいく会社にはメインバンクでもお金を出し渋るでしょ。付き合いの浅い会社なら尚更よ」
「河田さんはどうしたんですか?」
「ふふふ、増資」
「増資?」
「正確に言うと第三者割当増資」
「沈みかけた船ってもうボロボロなんですよね? 必要なものと言っても……」
沈みかけた船がもう一度浮かび上がるなんてあり得ない。
「何もしなかったら確実に沈没するのよ。債務超過の会社なんて沈みかけた船と同じよ。違うわ、もっと最悪かもね、でもね、対処法は同じなの」
「船と会社が?」
「そう、会社と船は同じ。だから債務超過の会社も沈みかけている船も対処法は同じなの」
「……」
沈みかけた船を想像すると怖くなる。そんな船になんて乗りたくない。
「実はとても簡単なことなの。沈みかけているんだから余分な荷物を海や川に放り投げる。重い荷物を載せたままじゃ船は浮かび上がらないでしょ。あっ、勘違いしないで、会社は余計なものを海や川に捨てたりしないから」
「……」
「河田さんが捨てたものって何だと思う?」
「まさか社員じゃないですよね?」
「うん~ん、社員……じゃないわね」
「わかりません」
本当にわからない。会社が捨てるものって何だろう。
「河田さんが捨てたものは会社よ」
「はっ?」
会社が会社を捨てるとはどういうことなのか。
「会社が上場すると、ほんのりと甘い香りが経済社会に漂うのよ。その香りに引き寄せられる人間たちがいるわけ。彼らはこんな風に上場企業に囁くの『いい会社があるんだけど』とね。つまり買収案件を持ち込んでくるわけ」
「買収案件?」
「会社を買ってくれということ。ところが甘い香りを漂わせている会社は、魔法使いから魔法にかけられているのよ。だからついつい余計なものまで買ってしまう。河田さんの会社もそうだったのよ。本業とは全く関係のない会社にまで手を出した。買ったはいいが、何の利益ももたらしてくれない。それどころか赤字を埋めなければならない羽目になる。河田さんは買収した会社をすべて手放したわ」
「……」
「さて、船は軽くなりました。でもまだ沈没する可能性がある。どうする? 何が必要?」
「ひょっとしたら新しい燃料だとか」
「その通りよ。燃料がなければ船は動かないわ。会社にとっての燃料とは何?」
「お金……ですか?」
「正解。でも沈んでいく会社にはメインバンクでもお金を出し渋るでしょ。付き合いの浅い会社なら尚更よ」
「河田さんはどうしたんですか?」
「ふふふ、増資」
「増資?」
「正確に言うと第三者割当増資」

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