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千一夜
第56章 第八夜 island 二本の電話
「第三者割当増資?」
「そう、増資。銀行からお金を借りても、それはいつかは返さなければならないでしょ? 増資なら株式を新しく発行するので返済の義務はないわけね。まぁ、河田さんの会社だって無傷ではいられないけど、債務超過の会社にそんなことは言ってられないわよね」
「第三者って誰が増資を引き受けたんですか?」
「誰だと思う?」
「河田さんが以前勤めていた外資の銀行?」
「そう思わよね。実は河田さんが勤めていた銀行はそれを待ってたみたい。河田さんに追い抜かれた連中は、河田さんが頭を下げるのを手ぐすね引いて待ってたのよ」
「今までの恨みを倍にして返す?」
「そう言うこと。あれ? 倍にして返すって何かのドラマであったわね。まぁ、そんなのどうでもいいか」
「それで、増資を引き受けたところは?」
テレビドラマに興味はない。私が知りたいのは事実だ。
「どこだと思う?」
「わかりません」
スナックに勤めるにあたり、オーナーは私にこうアドバイスしてくれた『新聞は読みなさい。ネットのニュースでもいいわ。お客さんが振ってくる話がわからいでは接客業失格よ』と。でも私の知識は深いものではない。加藤の話の流れからすれば河田が勤めいていた銀行でないことは確かだ。
「Sという総合商社」
「S?]
聞いたことはあるが、総合商社なんて私には縁がない。
「そう、S」
「Sは増資を引き受けてくれたんですね」
「引き受けたわよ。でもね、ここでもドラマがあったのよ」
「ドラマ……」
200〇年 〇月〇日。総合商社S第一会議室。
河田良和は秘書と共にその部屋に入った。河田も秘書も両手にもパンパンに膨れ上がった鞄を提げていた。
長方形の会議室。窓際の席にはすでに十人のS関係者が座っていた。十人は全員が男だった。河田と秘書に用意された席は入り口側。“お前たちは我が社の客ではない”それは総合商社Sの強い意思の表れだった。
河田の秘書が、用意した資料をS側の一人一人に配った。S側の人間は河田が用意した資料よりも、河田の秘書の方が気になった。
十人の厭らし男の目は、遠慮なしに桐谷美玲似の河田の秘書の体を舐め回した。
十人の中の誰かが、河田の秘書に言った。
「君さ、僕の秘書にならない? 僕なら秘書にそんなことさせないよ。転職しなさいよ」
十人の薄笑いが、河田にも河田の秘書にも聞こえた。
「そう、増資。銀行からお金を借りても、それはいつかは返さなければならないでしょ? 増資なら株式を新しく発行するので返済の義務はないわけね。まぁ、河田さんの会社だって無傷ではいられないけど、債務超過の会社にそんなことは言ってられないわよね」
「第三者って誰が増資を引き受けたんですか?」
「誰だと思う?」
「河田さんが以前勤めていた外資の銀行?」
「そう思わよね。実は河田さんが勤めていた銀行はそれを待ってたみたい。河田さんに追い抜かれた連中は、河田さんが頭を下げるのを手ぐすね引いて待ってたのよ」
「今までの恨みを倍にして返す?」
「そう言うこと。あれ? 倍にして返すって何かのドラマであったわね。まぁ、そんなのどうでもいいか」
「それで、増資を引き受けたところは?」
テレビドラマに興味はない。私が知りたいのは事実だ。
「どこだと思う?」
「わかりません」
スナックに勤めるにあたり、オーナーは私にこうアドバイスしてくれた『新聞は読みなさい。ネットのニュースでもいいわ。お客さんが振ってくる話がわからいでは接客業失格よ』と。でも私の知識は深いものではない。加藤の話の流れからすれば河田が勤めいていた銀行でないことは確かだ。
「Sという総合商社」
「S?]
聞いたことはあるが、総合商社なんて私には縁がない。
「そう、S」
「Sは増資を引き受けてくれたんですね」
「引き受けたわよ。でもね、ここでもドラマがあったのよ」
「ドラマ……」
200〇年 〇月〇日。総合商社S第一会議室。
河田良和は秘書と共にその部屋に入った。河田も秘書も両手にもパンパンに膨れ上がった鞄を提げていた。
長方形の会議室。窓際の席にはすでに十人のS関係者が座っていた。十人は全員が男だった。河田と秘書に用意された席は入り口側。“お前たちは我が社の客ではない”それは総合商社Sの強い意思の表れだった。
河田の秘書が、用意した資料をS側の一人一人に配った。S側の人間は河田が用意した資料よりも、河田の秘書の方が気になった。
十人の厭らし男の目は、遠慮なしに桐谷美玲似の河田の秘書の体を舐め回した。
十人の中の誰かが、河田の秘書に言った。
「君さ、僕の秘書にならない? 僕なら秘書にそんなことさせないよ。転職しなさいよ」
十人の薄笑いが、河田にも河田の秘書にも聞こえた。

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