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千一夜
第55章 第八夜 island
万策尽きた私が向かった先は、宝くじ売り場だった。そこで買った宝くじが大当たりだった……というような奇跡的な出来事は、残念ながら私には起こらなかった。
未来を想像できない私は運にも見放された。他力ももう当てにはならない。いやそもそもそれを頼りにした時点で私は負けていた。
寝て、起きて、そして食べて働く。私は一生そのサイクルで生きていかなければならない。
そんな風に思っていたときだった。ある日の夕方、私のスマホが着信音を鳴らした。スマホに登録はしていたが、あまり関係の深くない人間からの電話だった。
その女の名前は加藤里香。私と同じ派遣会社の人間だ。決定的な違いは彼女は派遣する側で、私は派遣される側だと言うことだ。
「工藤さん、五反田のスナックで働いてみない?」
加藤は私にそう言った。紹介先がスナック、いよいよ私は地獄の坂を転がり落ちていく。スナックの次は何だろう?
「……」
私が黙っていると彼女はこう続けた。
「あっ、これね、会社じゃなくて私個人からの誘いだから」
「加藤さんの?」
「そう、実はね、私もそこでバイトしているのよ」
「えっ? 本当ですか?」
「本当よ。週に一日だけど」
「週一で?」
「そう、悪くないアルバイトだと思うわよ。時給は今の二倍になるし、チップも期待できるし、もちろん交通費も支給されるわ」
加藤にそう言われても水商売には抵抗がある。
「でも私なんか……、何をすればいいのかわからないですよ」
「簡単よ、何もしなくていいの。まぁカウンターの中でお酒は作らないといけないけど、そんなの私があなたに教えてあげるわ。今言ったようにスナックでもカウンターの中での仕事だから、変態オヤジに体を触られることはないわ」
「私、お客さんとお話なんてできませんよ」
テレビドラマなんかで見たことがある。水商売は話し上手でないと客から好かれない。
「ふふふ」
意味深な加藤の笑い。
「可笑しいですか?」
「工藤さん、あなた勘違いしているわ。水商売にもいろいろあるのよ。スナックに来る客の八割くらいは、カウンターの中にいる従業員の話なんて期待していないわ」
「……」
じゃあ何を期待しているのかと訊ねたかったが、訊ねるのを止めた。だが、加藤は私にこう言った。
「あのね、スナックに来る八割の客は、自分の話を聞いてもらうために店に来るのよ」
「……」
未来を想像できない私は運にも見放された。他力ももう当てにはならない。いやそもそもそれを頼りにした時点で私は負けていた。
寝て、起きて、そして食べて働く。私は一生そのサイクルで生きていかなければならない。
そんな風に思っていたときだった。ある日の夕方、私のスマホが着信音を鳴らした。スマホに登録はしていたが、あまり関係の深くない人間からの電話だった。
その女の名前は加藤里香。私と同じ派遣会社の人間だ。決定的な違いは彼女は派遣する側で、私は派遣される側だと言うことだ。
「工藤さん、五反田のスナックで働いてみない?」
加藤は私にそう言った。紹介先がスナック、いよいよ私は地獄の坂を転がり落ちていく。スナックの次は何だろう?
「……」
私が黙っていると彼女はこう続けた。
「あっ、これね、会社じゃなくて私個人からの誘いだから」
「加藤さんの?」
「そう、実はね、私もそこでバイトしているのよ」
「えっ? 本当ですか?」
「本当よ。週に一日だけど」
「週一で?」
「そう、悪くないアルバイトだと思うわよ。時給は今の二倍になるし、チップも期待できるし、もちろん交通費も支給されるわ」
加藤にそう言われても水商売には抵抗がある。
「でも私なんか……、何をすればいいのかわからないですよ」
「簡単よ、何もしなくていいの。まぁカウンターの中でお酒は作らないといけないけど、そんなの私があなたに教えてあげるわ。今言ったようにスナックでもカウンターの中での仕事だから、変態オヤジに体を触られることはないわ」
「私、お客さんとお話なんてできませんよ」
テレビドラマなんかで見たことがある。水商売は話し上手でないと客から好かれない。
「ふふふ」
意味深な加藤の笑い。
「可笑しいですか?」
「工藤さん、あなた勘違いしているわ。水商売にもいろいろあるのよ。スナックに来る客の八割くらいは、カウンターの中にいる従業員の話なんて期待していないわ」
「……」
じゃあ何を期待しているのかと訊ねたかったが、訊ねるのを止めた。だが、加藤は私にこう言った。
「あのね、スナックに来る八割の客は、自分の話を聞いてもらうために店に来るのよ」
「……」

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