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千一夜
第55章 第八夜 island
 ほんの少し私のサクセスストーリー(これも古い言い方なのかもしれない)に耳を傾けてほしい(興味があればの話だが)。
 田舎暮らしが嫌だったので、私は必死に勉強をして東京の大学に進学した。私が入学した大学は、誰かに自慢できるような大学ではなかったが、世間で言われている“何とかラン大学”でもない。私が大学名を言えば「ああ、あの大学ね」と言われるくらいの中堅大学だ。
 大学生活を楽しんだのは二年生くらいまでだろうか、三年生になったとたん、周りの友達が忙しくなり始めた。就職活動って大学三年生から始めなければいけないなんて、誰が決めたんだ? そのとき私は、そう言う仕組みを作った大馬鹿野郎を思い切り殴ってやりたかった。
 私はその波(就活)に乗り遅れた。希望する会社(当たり前だが希望する会社は一社だけではない)からの内定の知らせは私に届かなかった。アナウンサーになりたいなんて一度も思ったことはない。私は身の程を知っている。コネなんてないし、人が振り返るような美人でもない(このご時世、こういう言い方は差別になるのかもしれないが、いつの時代でも社会には表と裏がある)。
 せめてTOEICのスコアが800点以上でもあれば、私の目の前に内定というクモの糸が降りてきたかもしれないのだが……悲しいかな私は英語が得意ではない。
 田舎に帰るなんて選択肢は私にはなかった。だって私は田舎が嫌で東京に出てきたのだ。こうなれば就職でも永久就職を狙いたい。ところがそんなときに限って世の男たちの目に私は入らない。
 断っておく、私は美人ではないがブスでもない(このご時世……ご理解いただきたい)。巨乳ではないが、そこそこ膨らみのある私の胸に惹きつけられる男たちは必ずいるはずだ(私の願望)。
 だが内定が出ない私を拾ってくれる永久就職先は見つからなかった(見つけてもらえなかったと言った方がいいかもしれない)。
 幸いなことに内定がもらえなくても、永久就職先に出会わなくても東京では生きていける(おそらく田舎でも)。取り合えず私は派遣会社に登録した。若くても容姿もまぁまぁだったお陰で、働き先は直ぐに紹介された。
 いくつかの不満を我慢すれば派遣での仕事も悪くないと思う。でも一つだけ受け入れられないことがある。
 心が折れるとき……正直に言うとむかつくとき。
 
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