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千一夜
第54章 第七夜 最終章 真空のゆらぎ
 夜の十一時半、私は咲子が眠るのを待って後藤からもらった紙袋の中身を調べた。袋の中に手を入れ、後藤が用意してくれた資料の束を手に取った。
 まず私が調べて欲しいと頼んだ、199×年5月×日の翌日の新聞をコピーした紙が目に飛び込んできた。 
 経済部なのか社会部なのかわからないが、記者のメモ(もちろんコピーしたもの)のようなものまで紙袋の中に入っていた。
「あんな物は捨ててしまえ」と山翠楼のバーで言った後藤の顔が一瞬曇った。後藤の表情を曇らせた記事が必ずこの中にある。私は一枚一枚丁寧に確認した。
 あった! 新聞記事の上に大きな「?」が記されていた。おそらくこの「?」は記者が書いたものに違いない。
 199×年5月×日。日本海から流れてきた厚い雨雲の影響で、その日秋田は午後から天候が崩れ出した。午後二時を過ぎたあたりから雨足は強くなり、秋田県内の地域によっては大雨注意報が発令された。
 ずぶ濡れのその女の子は、天気が大きく崩れたためにI 岳の登頂を断念し下山してきた登山者によって発見された。
 発見時、女の子は木の枝や葉を傘代わりにして、その木の根元でうずくまっていた。上はシャツとジャケットのようなもの、下にはズボンを穿いており、雨合羽のようなものは着ていなかった。
 余程空腹だったのか、登山者が行動食として持っていたチョコレートと水を女の子にあげると、女の子はそれらを一気に食べた。
 女の子が落ち着くのを待って、登山者は女の子にこう訊ねた。
「一人でここに来たのかい?」
 女の子はこう答えた。
「お父さんとお姉ちゃんとハイキングをするためにここに来た」
 登山者はまた女の子に訊ねた。
「お父さんとお姉ちゃんは?」
 女の子は泣いてこう言った。
「はぐれてしまった」
 登山者は自分のレインウエアを女の子に着せてから、女の子の手を繋いで登山道入り口まで下りた。携帯の電波が通じていることを確認すると、登山者は警察に連絡した。
 地元の警察がやって来たのは、登山者が通報してから十五分経っていた。
 その後、女の子の父親と姉の捜索のために警察署から十数名、そして地元の山岳クラブからも何名かやって来た。午後五時辺りが暗くなりその日の捜索は打ち切られた。残念ながら女の子の父親も姉も発見には至らなかった。
 登山者に助けられたその女の子は、自分を江村都子と名乗った。
 
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