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千一夜
第54章 第七夜 最終章 真空のゆらぎ
十二月の定例会は無事に終わった。もともと市議会の議員も何かしら遠山の恩恵を受けている人間が多い(すべてと言っても過言ではない)。幸いなことに今街を二分するような問題もない(街にが二分されたことなど一度もないが)。
波風を立てずに議会を進めていく術は心得ている。市長だからと言って街の行政を一人で推し進めていくことなど到底できない、
担当部署の課長などと十分打ち合わせをして、私は市長として初めての議会に望むことが出来た。
上々の出だしだと言っていいだろう。
だからと言って市長の仕事はそれで終わりではない。教育、福祉、そして医療。考えなければならない問題は次から次へと持ち込まれる。
悲しいかな、教育も福祉も医療も遠山なくして成り立っていないのが現状だ。街の奨学金にも福祉施設にも遠山は毎年多額の寄付をしてくれる。本来なら役所主導で病院を誘致しなければならないのだが、私の街には遠山高獅が理事長を務める遠山総合病院がある。
人口減が今や地方都市の大問題となっているが、私の街は遠山のお陰で毎年人口が増えている。人口が増えたことを喜んでいる暇はない。人が増えれば教育の施設、病院ならば病床を増やさなければならない。
今私の街では三年後開院の予定で遠山第二総合病院の建設が進んでいる。そんなわけで街の者はこう言うのだ。「この街に役所はいらない。遠山様がすべてしてくれる」と。これが私の街の姿なのだ。
「悪かったな。香坂があんなにしつこい奴だとは知らなかった」
「仕方ないわよ。親ってそう言うもんじゃないの? 子供のためなら命も掛けることができるのよ」
私の小さな事務所にさっきまでいた香坂が、息子と娘の就職のことで咲子に頭を下げていたのだ。
「だったらそれは大きな間違いだ。本当に子どものことを思うなら咲子のコネにはすがらない。それが本当の親だよ」
「亮ちゃん、私にはコネなんかないわよ。パパに頼んでもじろりと睨まれるだけ。亮ちゃんも知ってるじゃない」
「だよな。会長はそう言う人だ」
「亮ちゃん、いつまで私のパパを会長と呼ぶつもり? お義父さんと呼んだら?」
「……」
情けないが、まだ咲子の父をお義父さんとは呼べない。
事務所に竹内が迎えに来た。
「帰りましょうか?」
「ああ」
私は後藤の紙袋を鞄に入れて竹内の車に乗った。
紙袋の中の誰かが私に呼びかけている気がした。
波風を立てずに議会を進めていく術は心得ている。市長だからと言って街の行政を一人で推し進めていくことなど到底できない、
担当部署の課長などと十分打ち合わせをして、私は市長として初めての議会に望むことが出来た。
上々の出だしだと言っていいだろう。
だからと言って市長の仕事はそれで終わりではない。教育、福祉、そして医療。考えなければならない問題は次から次へと持ち込まれる。
悲しいかな、教育も福祉も医療も遠山なくして成り立っていないのが現状だ。街の奨学金にも福祉施設にも遠山は毎年多額の寄付をしてくれる。本来なら役所主導で病院を誘致しなければならないのだが、私の街には遠山高獅が理事長を務める遠山総合病院がある。
人口減が今や地方都市の大問題となっているが、私の街は遠山のお陰で毎年人口が増えている。人口が増えたことを喜んでいる暇はない。人が増えれば教育の施設、病院ならば病床を増やさなければならない。
今私の街では三年後開院の予定で遠山第二総合病院の建設が進んでいる。そんなわけで街の者はこう言うのだ。「この街に役所はいらない。遠山様がすべてしてくれる」と。これが私の街の姿なのだ。
「悪かったな。香坂があんなにしつこい奴だとは知らなかった」
「仕方ないわよ。親ってそう言うもんじゃないの? 子供のためなら命も掛けることができるのよ」
私の小さな事務所にさっきまでいた香坂が、息子と娘の就職のことで咲子に頭を下げていたのだ。
「だったらそれは大きな間違いだ。本当に子どものことを思うなら咲子のコネにはすがらない。それが本当の親だよ」
「亮ちゃん、私にはコネなんかないわよ。パパに頼んでもじろりと睨まれるだけ。亮ちゃんも知ってるじゃない」
「だよな。会長はそう言う人だ」
「亮ちゃん、いつまで私のパパを会長と呼ぶつもり? お義父さんと呼んだら?」
「……」
情けないが、まだ咲子の父をお義父さんとは呼べない。
事務所に竹内が迎えに来た。
「帰りましょうか?」
「ああ」
私は後藤の紙袋を鞄に入れて竹内の車に乗った。
紙袋の中の誰かが私に呼びかけている気がした。

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