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千一夜
第54章 第七夜 最終章 真空のゆらぎ
「見てないのか?」
「ああ。悪いな、俺の方から頼んでおいて」
「構わんよ。長谷川、あんなのはもう捨ててしまえ」
「どうして?」
「どうしてもだ。林から少し聞いた。林のとこの社員がお前に近づいて行ったんだろ? それも超がつく美人だそうじゃないか?」
「……」
「関わらない方がいい。幸い向こうから姿を隠したんだって? 面倒なことが起きずに済んだんだ。ラッキーなんだよ長谷川は」
「ラッキー……か」
 私はグレンフィディックをぐいと一口飲んだ。
「お前にようやく春が来たんだ。今手にしている春を逃がすな」
「……」
 後藤の言う春とは、市長の地位のことであり、咲子のことだ。
「再来週にはもう議会があるそうじゃないか?」
「定例会は待ったなしだ」
「まぁ、お前のことだから田舎の市議会なんて楽勝だろ?」
「田舎が余計だ。それに楽勝な仕事は一つもない。仕事はすべて命懸けだ。仕事の先に市民がいるんだ。市民の生活を守らなけれなばらない。それが市長だ」
「模範的な市長の台詞だな」
「ふん」
「遠山高獅からまじでゴルフ誘われたぜ。東京に帰ったら役員に自慢してやる」
「お前子供だな」
「長谷川、俺はな、永遠の少年なんだよ」
「お前は俺と同じおっさんだ。」
「いや、俺だけは少年だ。お前も菅野も林も高橋もおっさんだけどな」
「俺にはお前だけがおっさんのような気がするけどな」
「何とでも言ってくれ」
 後藤はそう言うと、カウンターにいるバーテンダーにお代わりを頼んだ。
「そろそろ役員だな」
「俺はお前や高橋と違って勉強はダメだった。だが俺は世当たり上手だ。俺は俺の才能で出世してきた。文句あるか?」
「いや、もっともっと上を目指せ。お前ならできる」
「当然だ。遠山高獅に近づけたことで俺の出世が早くなりそうだ。来春のゴルフが楽しみだ」
「待ってるぞ」
「ああ」
 そう言って後藤はグラスの酒を口に運んだ。
「飲み過ぎるなよ」
「長谷川」
「何だ?」
「あの日は何もなかったぞ。午後から天気はくずれたようだが、あの日の秋田には何も起こらなかった。殺人事件もなければ交通事故の記事も見当たらない。平和な一日だったんだ」
「そうか」
「何もなかった……」
 そう言った後の後藤の顔を見なければよかった。後藤は紙袋に入っている資料の中の何かに引っかかるものを感じた。後藤はそう言う顔をしていた。

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