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千一夜
第54章 第七夜 最終章 真空のゆらぎ
「長谷川には悪いが、俺はあまり期待していなかったんだ」
「何を?」
 私と後藤は山翠楼のバーでスコッチウイスキーを飲んでいる。ほんの少し前、この大きな丸いテーブルを五人で囲んでいたのだが、菅野と林、そして高橋は部屋に戻った。
「田舎は所詮田舎だ」
「確かお前は埼玉の出身だよな?」
「長谷川、埼玉を敵に回すなよ。埼玉は大都会だ。誤解するな長谷川、俺はお前の住んでいる田舎が大好きになった。この老舗旅館にこんなに素晴らしいバーがあるなんて誰が想像できる? 今、俺たちはグレンフィディックを飲んでいる。こんな田舎でだぞ」
「後藤、お前も俺の街を敵に回すなよ」
「料理も美味かった。で、ここには温泉がある。女房共はこの宿に来てから三回も温泉に向かった。俺も菅野も林も高橋も、ようやく女房孝行ができた。お前には感謝しかない」
「つまり後藤は俺の街のファンになったということだな?」
「そうだ。長谷川の街は最高だ!」
 時間は夜の十一時、バーには私と後藤以外誰もいない。後藤が少々大きな声を出したところで誰かから諫められることはない。
「どうだ、と言いたいところだが、こんな内祝いの会が開けたのはすべて咲子の父のお陰だ」
「そうそう、遠山高獅。お前のお義父さんだな。経済部の記者が言ってたわ。最高の経営者だってな」
「……」
「だが問題がないわけでもない」
「どういう意味だ?」
「後継ぎだよ、後継ぎ」
「お義兄さんだっているし、お義姉さんの旦那だっている。心配はないさ」
「ああ。でもな、二人とも遠山高獅に比べると小粒なんだよ。経営者としての魅力が今一つなんだ。あっ、そうだ。お前が会社の代表者になると言う手もあったな」
「ないよ」
「でも遠山高獅は凄いよ。俺たちだけじゃなくて、女房たちにも酒を注いで回ったんだぜ。いい人なんだろうな」
「この街では神様だ」
「なるほど。長谷川、気を付けろよ」
「急にどうした?」
「いい人って、怖いぞ」
「今朝言われたよ。ダメだったら首を切るとね」
「首を切られたらどうする?」
「取り合えずお前を訪ねる。そしてお前の鞄持ちをする」
「鞄持ちっていつの時代の言葉だよ。まぁ、そうなったら俺たちに任せろ。お前の働き口なんて簡単に見つかる」
「持つべきものはやはり友だな」
「調子のいい野郎だ。ところで長谷川、あれはどうした?」
「あれ?」
「ああ、あれだよ」
「……」
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