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千一夜
第54章 第七夜 最終章 真空のゆらぎ
誰かになりすますなんて簡単にできることではない。どこかでなりすました本人に出くわすことだってあるだろうし、本人でなくてもその人物を知っている人にばったり会うこともあるかもしれない。
労多くして益少なし。誰がこんなバカげたことをやるのだろうか。だが江村都子は沢田絵里になりすました。沢田絵里を乗っ取り、江村都子は堂々と沢田絵里を演じていた。
ならば本当の沢田絵里は今どこにいるのか?
その答えを探ってはいけない。咲子のためにも、そして私の街のためにも。
車は高速道路を走っている。私は竹内に次のサービスエリアに入って欲しいと頼んだ。
「竹内さん、喉が渇きました。申し訳ないが次のサービスエリアに入ってもらえないだろうか?」
「承知しました」
喉など乾いていない。どうしても今咲子に伝えたいことがある。街に帰ってからではなく、今咲子に話しておきたい。いや、話さなければいけない。
車がサービスエリアの駐車スペースに止まった。
「竹内さん、すみませんが、コーヒーを買ってきてもらえないでしょうか?」
「承知しました。コーヒーはブラックでよろしいでしょうか?」
「私と咲子はそれで、それから竹内さんも好きなものを選んでください」
「ありがとうございます。長谷川さん、少し時間がかかるかもしれません、五分か十分くらい。構いませんか?」
「お願いします」
「はい」
人払いなんてしたことはない。竹内に聞かれて困るようなことではないが、それでもこれから私が話すことは竹内に知られたくない。竹内は私の気持ちを察してくれた。だから五分、十分という時間をわざわざ言ったのだ。
竹内がエンジンを切り、車から降りた。
「咲子、もう止めようよう」
「そうね」
「初めからこんなことなんかしなければよかった。悪かったな」
「いいのよ、気にしてないわ」
「君には大学まで行ってもらった、申し訳ない」
「優秀な後輩を探しに行っただけよ」
「ありがとう」
「沢田絵里が誰かなんてもうどうでもいい。これからは俺は君と街のために全力を尽くす。咲子、愛している。俺は必ず俺たちの街を日本一の街にする。誓うよ」
「愛してるって言葉がどこかに挟まっててよくわからないわ。亮ちゃん、もう一度言ってくれる?」
「咲子、愛している」
「私も亮ちゃんを愛してるわ」
後藤が私に渡してくれた紙袋の中の情報に、私は目を瞑った。
労多くして益少なし。誰がこんなバカげたことをやるのだろうか。だが江村都子は沢田絵里になりすました。沢田絵里を乗っ取り、江村都子は堂々と沢田絵里を演じていた。
ならば本当の沢田絵里は今どこにいるのか?
その答えを探ってはいけない。咲子のためにも、そして私の街のためにも。
車は高速道路を走っている。私は竹内に次のサービスエリアに入って欲しいと頼んだ。
「竹内さん、喉が渇きました。申し訳ないが次のサービスエリアに入ってもらえないだろうか?」
「承知しました」
喉など乾いていない。どうしても今咲子に伝えたいことがある。街に帰ってからではなく、今咲子に話しておきたい。いや、話さなければいけない。
車がサービスエリアの駐車スペースに止まった。
「竹内さん、すみませんが、コーヒーを買ってきてもらえないでしょうか?」
「承知しました。コーヒーはブラックでよろしいでしょうか?」
「私と咲子はそれで、それから竹内さんも好きなものを選んでください」
「ありがとうございます。長谷川さん、少し時間がかかるかもしれません、五分か十分くらい。構いませんか?」
「お願いします」
「はい」
人払いなんてしたことはない。竹内に聞かれて困るようなことではないが、それでもこれから私が話すことは竹内に知られたくない。竹内は私の気持ちを察してくれた。だから五分、十分という時間をわざわざ言ったのだ。
竹内がエンジンを切り、車から降りた。
「咲子、もう止めようよう」
「そうね」
「初めからこんなことなんかしなければよかった。悪かったな」
「いいのよ、気にしてないわ」
「君には大学まで行ってもらった、申し訳ない」
「優秀な後輩を探しに行っただけよ」
「ありがとう」
「沢田絵里が誰かなんてもうどうでもいい。これからは俺は君と街のために全力を尽くす。咲子、愛している。俺は必ず俺たちの街を日本一の街にする。誓うよ」
「愛してるって言葉がどこかに挟まっててよくわからないわ。亮ちゃん、もう一度言ってくれる?」
「咲子、愛している」
「私も亮ちゃんを愛してるわ」
後藤が私に渡してくれた紙袋の中の情報に、私は目を瞑った。

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