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千一夜
第53章 第七夜 幻界の扉
「沢田絵里さん……じゃないんですか?」
私は新藤にそう訊ねた。
「全然違うわよ」
新藤はきっぱりとそう言った。
やはり誰かが沢田絵里になりすましていた。私はその誰かが江村都子なのではないのかと思っている。いや、間違いなく沢田絵里に扮していたのは江村都子だ。
新藤が「違う」と言うことを予想はしていた。だが、本当の沢田絵里を知っている新藤の言葉は、私の中に微かに光っていた灯りをふっと消した。
新藤に訊ねることなどもう何もない。
「ちょっと待ってていただける?」
「はっ?」
「絵里ちゃんの成人式のときの写真がうちにあると思うのよ。振り袖姿の絵里ちゃんがとっても綺麗だったんで一枚撮らせてもらったの。それを今見せてあげるわ」
「お願いします」
私はそう言って新藤に頭を下げた。私は、本物の沢田絵里がどんな女性なのか知りたかった。
新藤が写真を探しに行った。
私と咲子は顔を合わせても言葉を交わすことはなかった。新藤がアルバムを持って戻ってきた。そして新藤はアルバムを繰って沢田絵里の写真を探し始めた。
「あったわ、これよ」
新藤は沢田絵里の写真が貼ってある頁を開いたまま私と咲子にそれを見せた。私と咲子は写真に顔を近づけた。
沢田家の三人が写真に写っていた。着物姿の絵里が真ん中で、右に絵里の父、左に絵里の母。三人ともとても柔らかく笑っていた。
写真の絵里は勉強のできる賢そうな顔をしている。だが、偽物の沢田絵里(江村都子)のように男の目を惹きつけるような魅力は一切なかった。
「整形したとか……」
新藤はぽつりとそう言った。
「整形なんてする必要ないと思うけど」
咲子がそう言った。
「そうよね、絵里ちゃんだって美人なんだから、整形なんかしてないわよね」
新藤の言葉には願望のようなものが含まれているような気がした。
「お忙しいところありがとうございました。それでは私たちはこれで失礼します」
もうこれ以上ここにいても意味がない。
「ちょっとお願いがあるんだけど」
新藤が私を見てそう言った。
「何でしょう?」
「お隣、何とかならないかしら。庭の掃除とか……、もし絵里ちゃんに会ったらその辺のところを言ってて欲しいのよ。このままだとお隣の家朽ちていくだけでしょ?」
「沢田絵里さんのお会いすることがあったら必ずお伝えします」
多分、本物の沢田絵里はもういない。
私は新藤にそう訊ねた。
「全然違うわよ」
新藤はきっぱりとそう言った。
やはり誰かが沢田絵里になりすましていた。私はその誰かが江村都子なのではないのかと思っている。いや、間違いなく沢田絵里に扮していたのは江村都子だ。
新藤が「違う」と言うことを予想はしていた。だが、本当の沢田絵里を知っている新藤の言葉は、私の中に微かに光っていた灯りをふっと消した。
新藤に訊ねることなどもう何もない。
「ちょっと待ってていただける?」
「はっ?」
「絵里ちゃんの成人式のときの写真がうちにあると思うのよ。振り袖姿の絵里ちゃんがとっても綺麗だったんで一枚撮らせてもらったの。それを今見せてあげるわ」
「お願いします」
私はそう言って新藤に頭を下げた。私は、本物の沢田絵里がどんな女性なのか知りたかった。
新藤が写真を探しに行った。
私と咲子は顔を合わせても言葉を交わすことはなかった。新藤がアルバムを持って戻ってきた。そして新藤はアルバムを繰って沢田絵里の写真を探し始めた。
「あったわ、これよ」
新藤は沢田絵里の写真が貼ってある頁を開いたまま私と咲子にそれを見せた。私と咲子は写真に顔を近づけた。
沢田家の三人が写真に写っていた。着物姿の絵里が真ん中で、右に絵里の父、左に絵里の母。三人ともとても柔らかく笑っていた。
写真の絵里は勉強のできる賢そうな顔をしている。だが、偽物の沢田絵里(江村都子)のように男の目を惹きつけるような魅力は一切なかった。
「整形したとか……」
新藤はぽつりとそう言った。
「整形なんてする必要ないと思うけど」
咲子がそう言った。
「そうよね、絵里ちゃんだって美人なんだから、整形なんかしてないわよね」
新藤の言葉には願望のようなものが含まれているような気がした。
「お忙しいところありがとうございました。それでは私たちはこれで失礼します」
もうこれ以上ここにいても意味がない。
「ちょっとお願いがあるんだけど」
新藤が私を見てそう言った。
「何でしょう?」
「お隣、何とかならないかしら。庭の掃除とか……、もし絵里ちゃんに会ったらその辺のところを言ってて欲しいのよ。このままだとお隣の家朽ちていくだけでしょ?」
「沢田絵里さんのお会いすることがあったら必ずお伝えします」
多分、本物の沢田絵里はもういない。

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