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千一夜
第53章 第七夜 幻界の扉
竹内がハザードランプをつけて車を沢田絵里の実家の前に止めた。
私と咲子は車から降りて沢田絵里の家の前に立った。鉄の門扉があって、そこから五m位先に玄関があった。庭付きの二階建ての家。古くはないが新しくもない家。
一見して今この家には誰も住んではいないことがわかった。門扉は錆びだらけだし、庭の手入れが全くされていなかった。おまけに玄関前には何時配達されたのかわからないような新聞や郵便物が散乱していた。
「誰かが住んでいる様子はないな」
「そうね。無駄足だったかしら」
「それじゃあ竹内さんに申し訳ない。隣の家の人にでも訊いてみることにしょう」
「話してくれるかしら」
「話してもらえなければそれまでだ」
「そうよね」
私と咲子は隣の家に向かった。
聞き手は咲子。男の私に隣人が沢田絵里のことを話すとは思えなかった。
“新藤”という表札が出ている家のチャイムを鳴らすと「はい」と返事が返ってきた。咲子が友人の沢田絵里のことについて教えてくれと頼んだ。断られるかと思ったが、隣人は「少し待ってて頂戴」と言ってインターホンを切った。
家の鍵が外される音がした。隣人は六十代くらいの女性だった。
「お休みのところ申し訳ございません。私、長谷川咲子と言います。お隣の沢田絵里さんとは同じ大学に通っておりました。絵里ちゃんのマンションを訪ねたのですが留守だったのだで、ひょっとしたらご実家かなと思いまして」
マンションを訪ねたと言うのは嘘だ。
「お隣の絵里ちゃんには十年くらい会っていないわ。家には奥さんがお一人で暮らしていたんだけど、今奥さんは老人ホームよ」
「ご主人は?」
「十年くらい前に亡くなられたわ。知らなかったの?」
友人の父の死を知らなかったとは言えない。“拙い”そんなふうに思ったとき、咲子の隣に立っている私に警戒するような新藤の目が向かってきた。
「あっ、すみません、これ私の名刺です」
それを察知した咲子が新藤に名刺を渡した。
「専務取締役!」
咲子の肩書に驚いた新藤が大きな声を出した。
「私の主人です。それから車をこちらのお宅の前に止めさせていただきました」
車は沢田絵里の実家の前から移動していた。新藤の目は私ではなく、家の前に止まっている黒のレクサスに向かった。
運転手付きの黒塗りの高級車は、新藤の警戒心を一気に溶かした。
私と咲子は車から降りて沢田絵里の家の前に立った。鉄の門扉があって、そこから五m位先に玄関があった。庭付きの二階建ての家。古くはないが新しくもない家。
一見して今この家には誰も住んではいないことがわかった。門扉は錆びだらけだし、庭の手入れが全くされていなかった。おまけに玄関前には何時配達されたのかわからないような新聞や郵便物が散乱していた。
「誰かが住んでいる様子はないな」
「そうね。無駄足だったかしら」
「それじゃあ竹内さんに申し訳ない。隣の家の人にでも訊いてみることにしょう」
「話してくれるかしら」
「話してもらえなければそれまでだ」
「そうよね」
私と咲子は隣の家に向かった。
聞き手は咲子。男の私に隣人が沢田絵里のことを話すとは思えなかった。
“新藤”という表札が出ている家のチャイムを鳴らすと「はい」と返事が返ってきた。咲子が友人の沢田絵里のことについて教えてくれと頼んだ。断られるかと思ったが、隣人は「少し待ってて頂戴」と言ってインターホンを切った。
家の鍵が外される音がした。隣人は六十代くらいの女性だった。
「お休みのところ申し訳ございません。私、長谷川咲子と言います。お隣の沢田絵里さんとは同じ大学に通っておりました。絵里ちゃんのマンションを訪ねたのですが留守だったのだで、ひょっとしたらご実家かなと思いまして」
マンションを訪ねたと言うのは嘘だ。
「お隣の絵里ちゃんには十年くらい会っていないわ。家には奥さんがお一人で暮らしていたんだけど、今奥さんは老人ホームよ」
「ご主人は?」
「十年くらい前に亡くなられたわ。知らなかったの?」
友人の父の死を知らなかったとは言えない。“拙い”そんなふうに思ったとき、咲子の隣に立っている私に警戒するような新藤の目が向かってきた。
「あっ、すみません、これ私の名刺です」
それを察知した咲子が新藤に名刺を渡した。
「専務取締役!」
咲子の肩書に驚いた新藤が大きな声を出した。
「私の主人です。それから車をこちらのお宅の前に止めさせていただきました」
車は沢田絵里の実家の前から移動していた。新藤の目は私ではなく、家の前に止まっている黒のレクサスに向かった。
運転手付きの黒塗りの高級車は、新藤の警戒心を一気に溶かした。

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