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千一夜
第53章 第七夜 幻界の扉
喉の渇きで夜中に目が覚めたなんてことは今までに一度もなかった。隣で寝ている咲子を起こさないようにして私はベッドから出た。冷蔵庫に向かい、中から冷えたエビアンを取った。
冷たいペットボトルを持って私は窓辺に向かった。キャップを開けて氷のように冷えているエビアンをごくごくと一気にあおる。
窓の外の都会はまだ夜の中に眠っていた。喉の渇きが癒えると、私は「ふぅ」とため息をついた。
最近私はよく眠ることができる。一度眠りの中にすとんと落ちると、朝まで目を覚ますことがない。深い眠りのせいなのか、朝起きると疲れがなくなっている。
結婚して背負うはずだった重圧を私はまだ感じていない。もちろん遠山の家の娘と一緒になることに不安がなかったわけではない。所詮お前は遠山の家の娘婿に過ぎない、というような目を感じるときもあるが、どうやら私はそう言う部分には鈍感なようだ。
闇の中で眠る東京は私にこう言っていた。
「沢田絵里とか江村都子なんてどうでもいいではないか。探るのはもう止めにしろ。お前は街に帰って仕事をすればいいんだ」
明日の朝、街に戻ろうか。私はそう思った。
咲子を起こさないようにしてベッドに潜り込む。目を瞑れば数秒で私は眠りの中に入り込むだろう……。
暗闇の中に私は立っていた。目を凝らして私は何かを探す。真っ暗だが、恐怖のようなものは感じない。怖くはないが、あまり気分のいいものでもない。
あれ? 誰かがいる。小さな女の子だ。その子は私にこちらに来いと手招きしている。誰だろうか? 私はその女の子に近づいて行った。女の子の顔を見ても霞がかかって誰なのか確認できない。すると女の子が私に手を繋いでくれと手を差し伸べてきた。
女の子はきっと闇が怖いのだ。だから私は女の子と手を繋いだ。その瞬間、私の心が激しく動揺した。もしかしたら二度と手を離すことが出来なくなるのではないかと感じたからだ。女の子は私の手を強く握ってるわけではない。手を離さないでくれと私に懇願しているわけでもない。
そして私と女の子は歩き始めた。何も見えない闇の中を私と女の子は歩いている。ふと思った。私と女の子はどこに向かっているのだろうかと。
だから私は女の子にこう訊ねた。
「どこに行くんだい?」
「ふふふ」
女の子は薄く笑っていた。
「君、京子ちゃんだよね?」
「ふふふ」
女の子はまた笑った。
冷たいペットボトルを持って私は窓辺に向かった。キャップを開けて氷のように冷えているエビアンをごくごくと一気にあおる。
窓の外の都会はまだ夜の中に眠っていた。喉の渇きが癒えると、私は「ふぅ」とため息をついた。
最近私はよく眠ることができる。一度眠りの中にすとんと落ちると、朝まで目を覚ますことがない。深い眠りのせいなのか、朝起きると疲れがなくなっている。
結婚して背負うはずだった重圧を私はまだ感じていない。もちろん遠山の家の娘と一緒になることに不安がなかったわけではない。所詮お前は遠山の家の娘婿に過ぎない、というような目を感じるときもあるが、どうやら私はそう言う部分には鈍感なようだ。
闇の中で眠る東京は私にこう言っていた。
「沢田絵里とか江村都子なんてどうでもいいではないか。探るのはもう止めにしろ。お前は街に帰って仕事をすればいいんだ」
明日の朝、街に戻ろうか。私はそう思った。
咲子を起こさないようにしてベッドに潜り込む。目を瞑れば数秒で私は眠りの中に入り込むだろう……。
暗闇の中に私は立っていた。目を凝らして私は何かを探す。真っ暗だが、恐怖のようなものは感じない。怖くはないが、あまり気分のいいものでもない。
あれ? 誰かがいる。小さな女の子だ。その子は私にこちらに来いと手招きしている。誰だろうか? 私はその女の子に近づいて行った。女の子の顔を見ても霞がかかって誰なのか確認できない。すると女の子が私に手を繋いでくれと手を差し伸べてきた。
女の子はきっと闇が怖いのだ。だから私は女の子と手を繋いだ。その瞬間、私の心が激しく動揺した。もしかしたら二度と手を離すことが出来なくなるのではないかと感じたからだ。女の子は私の手を強く握ってるわけではない。手を離さないでくれと私に懇願しているわけでもない。
そして私と女の子は歩き始めた。何も見えない闇の中を私と女の子は歩いている。ふと思った。私と女の子はどこに向かっているのだろうかと。
だから私は女の子にこう訊ねた。
「どこに行くんだい?」
「ふふふ」
女の子は薄く笑っていた。
「君、京子ちゃんだよね?」
「ふふふ」
女の子はまた笑った。

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