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千一夜
第53章 第七夜 幻界の扉
時間は午後の八時。食事会もお開きの時間になった。
「長谷川、ちょっと顔を貸せ」
シカゴコンサルティンググループ日本支社長の林が私にそう言った。
私と林は食事会の部屋を出て、ホテルの二階にあるバーに向かった。
私たちはカウンターの席に座った。オーダーは二人ともスコッチの水割り。
「今日はありがとう。楽しかったよ」
「長谷川の門出みたいなもんだ。まぁ、門出にしては随分と遅いがな。お前は知らなかったようだが、俺たち四人に遠山高獅から招待状が届いた。来月のパーティーと来春のゴルフの招待状だ。夫婦揃って出て欲しいと書いてあったぞ」
「会長がそんなことを……。ゴルフはともかくとして来月なんて予定は取れないだろ?」
「遠山高獅の誘いを断る馬鹿はこの世にはいない。もし行かなかったら俺は本社からどやされる。スケジュールなんて再調整すればいいだけの話だ。後藤も菅野もそして高橋も嫁さんを連れて行く、悪いか?」
「期待するなよ、何もない街だぞ」
「俺は一度遠山の城下町を見たかったんだ」
「さんざん見て回って、後でつまらない街だなんて言うなよ」
「おい、これ」
林はそう言って私の前にA4版サイズの真っ白の封筒を置いた。シカゴコンサルティンググループの社名は入っていない。
「……」
中に何が入っているのかわかったが、私は林の言葉を待った。
「今お前の目の前にある物は俺の忘れ物だ。忘れ物はお前に渡すことはできない。これから俺は五分くらいトイレに行くことにする。五分の間で中にあるものの中味を頭の中に入れろ。まぁお前なら五分もかからないと思うがな」
「悪いな」
「五分だぞ」
「……」
「そいつがお前に迷惑かけたようだな」
そう言って林はカウンターの席を立った。
「大したことじゃない」
「逃げるわけじゃないが、うちは選挙をサポートするような業務は行っていない。だが、お前にも遠山にも面倒をかけた。悪かった」
林はそう言うと私に頭を下げた。
「謝るなよ」
「それともう一つ。その白い封筒に入っているお嬢さんだが、入社試験で一度だけ試験日の変更をしている」
「どういうことだ?」
「何でもインフルに罹ったとかで日程の変更を申し出たらしい」
「それだけか?」
「いや。お嬢さん、筆記試験は満点だった」
「それが問題なのか?」
「我が社の中途採用の試験で過去に満点を取った人間はいない」
「長谷川、ちょっと顔を貸せ」
シカゴコンサルティンググループ日本支社長の林が私にそう言った。
私と林は食事会の部屋を出て、ホテルの二階にあるバーに向かった。
私たちはカウンターの席に座った。オーダーは二人ともスコッチの水割り。
「今日はありがとう。楽しかったよ」
「長谷川の門出みたいなもんだ。まぁ、門出にしては随分と遅いがな。お前は知らなかったようだが、俺たち四人に遠山高獅から招待状が届いた。来月のパーティーと来春のゴルフの招待状だ。夫婦揃って出て欲しいと書いてあったぞ」
「会長がそんなことを……。ゴルフはともかくとして来月なんて予定は取れないだろ?」
「遠山高獅の誘いを断る馬鹿はこの世にはいない。もし行かなかったら俺は本社からどやされる。スケジュールなんて再調整すればいいだけの話だ。後藤も菅野もそして高橋も嫁さんを連れて行く、悪いか?」
「期待するなよ、何もない街だぞ」
「俺は一度遠山の城下町を見たかったんだ」
「さんざん見て回って、後でつまらない街だなんて言うなよ」
「おい、これ」
林はそう言って私の前にA4版サイズの真っ白の封筒を置いた。シカゴコンサルティンググループの社名は入っていない。
「……」
中に何が入っているのかわかったが、私は林の言葉を待った。
「今お前の目の前にある物は俺の忘れ物だ。忘れ物はお前に渡すことはできない。これから俺は五分くらいトイレに行くことにする。五分の間で中にあるものの中味を頭の中に入れろ。まぁお前なら五分もかからないと思うがな」
「悪いな」
「五分だぞ」
「……」
「そいつがお前に迷惑かけたようだな」
そう言って林はカウンターの席を立った。
「大したことじゃない」
「逃げるわけじゃないが、うちは選挙をサポートするような業務は行っていない。だが、お前にも遠山にも面倒をかけた。悪かった」
林はそう言うと私に頭を下げた。
「謝るなよ」
「それともう一つ。その白い封筒に入っているお嬢さんだが、入社試験で一度だけ試験日の変更をしている」
「どういうことだ?」
「何でもインフルに罹ったとかで日程の変更を申し出たらしい」
「それだけか?」
「いや。お嬢さん、筆記試験は満点だった」
「それが問題なのか?」
「我が社の中途採用の試験で過去に満点を取った人間はいない」

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