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千一夜
第53章 第七夜 幻界の扉
大帝ホテル正面玄関。
私と咲子がタクシーから降りると「いらっしゃいませ」とそこで私たちを待っていた菅野が深く頭を下げた。
「三年ぶりだな」
「よく来てくれた。みんな待ってるぞ」
「約束は六時じゃなかったか?」
腕時計を見ると時間は五時半を少し回ったところだった。
「長谷川以外は五時と決めたんだ」
「週末でもみんな仕事があるだろ?」
「長谷川、後藤も林も高橋も偉くなったんだ。偉くなると時間に縛られない。時間を自由ににコントロール出来る。長谷川もこれからそうなるんだよ」
「そうなりたいが、俺はこれからも時間に縛られる。来年の箱根は申し訳ないが無理だ。だから今日来たんだ」
「市長も大変な仕事だな」
「まだ市長じゃないけどな」
「そんなことより奥さんを紹介してくれ」
「そうだよな。妻の咲子だ。咲子、こいつは大帝ホテル総支配人の菅野和夫。学生時代、五人の中で一番女の子からもてたくそ野郎だ」
「長谷川の妻の咲子と申します。本日はお招き頂きどうもありがとうございます」
咲子はそう言って菅野に頭を下げた。
「初めまして。くそ野郎の菅野です」
「ふふふ」
咲子が笑った。
「奥さん、長谷川は学生時代勉強しかしなかったくそ野郎です」
「ふふふ」
咲子がまた笑う。
「長谷川、鞄はどうした?」
「宿に置いてきた。食事に普通スーツケースなんて持ってこないだろ」
「後藤は何も言ってなかったのか?」
「何を?」
「長谷川夫妻の部屋はもう予約済みだ」
「どこに?」
「このホテルだよ」
「俺は予約なんかしていない。お前だって知ってるだろ、俺はお前のホテルに泊まれるような身分じゃない」
「泊まれよ。長谷川には請求書は届かない。心配するな、これは俺たちからの純粋なプレゼントだ」
「賄賂じゃないよな?」
「長谷川、冗談だよな?」
「冗談だよ、ははは」
「長谷川、お前のつまらない冗談なんかどうでもいい。みんな待ってるから早く行け」
「ああ」
「エレベーターはフロントを過ぎるとあるからな」
「サンキュー」
私がおどけてそう言うと、咲子がもう一度菅野に頭を下げた。
「ホテルというより宮殿だな。役所の職員だった男には似合わない」
館内に入り私は独り言のようにそう言った。
「友達の結婚式がここだったわ」
「まさか沢田絵里だとか」
「違うわよ」
「でも情報は手に入れた……」
「ふふふ」
私と咲子がタクシーから降りると「いらっしゃいませ」とそこで私たちを待っていた菅野が深く頭を下げた。
「三年ぶりだな」
「よく来てくれた。みんな待ってるぞ」
「約束は六時じゃなかったか?」
腕時計を見ると時間は五時半を少し回ったところだった。
「長谷川以外は五時と決めたんだ」
「週末でもみんな仕事があるだろ?」
「長谷川、後藤も林も高橋も偉くなったんだ。偉くなると時間に縛られない。時間を自由ににコントロール出来る。長谷川もこれからそうなるんだよ」
「そうなりたいが、俺はこれからも時間に縛られる。来年の箱根は申し訳ないが無理だ。だから今日来たんだ」
「市長も大変な仕事だな」
「まだ市長じゃないけどな」
「そんなことより奥さんを紹介してくれ」
「そうだよな。妻の咲子だ。咲子、こいつは大帝ホテル総支配人の菅野和夫。学生時代、五人の中で一番女の子からもてたくそ野郎だ」
「長谷川の妻の咲子と申します。本日はお招き頂きどうもありがとうございます」
咲子はそう言って菅野に頭を下げた。
「初めまして。くそ野郎の菅野です」
「ふふふ」
咲子が笑った。
「奥さん、長谷川は学生時代勉強しかしなかったくそ野郎です」
「ふふふ」
咲子がまた笑う。
「長谷川、鞄はどうした?」
「宿に置いてきた。食事に普通スーツケースなんて持ってこないだろ」
「後藤は何も言ってなかったのか?」
「何を?」
「長谷川夫妻の部屋はもう予約済みだ」
「どこに?」
「このホテルだよ」
「俺は予約なんかしていない。お前だって知ってるだろ、俺はお前のホテルに泊まれるような身分じゃない」
「泊まれよ。長谷川には請求書は届かない。心配するな、これは俺たちからの純粋なプレゼントだ」
「賄賂じゃないよな?」
「長谷川、冗談だよな?」
「冗談だよ、ははは」
「長谷川、お前のつまらない冗談なんかどうでもいい。みんな待ってるから早く行け」
「ああ」
「エレベーターはフロントを過ぎるとあるからな」
「サンキュー」
私がおどけてそう言うと、咲子がもう一度菅野に頭を下げた。
「ホテルというより宮殿だな。役所の職員だった男には似合わない」
館内に入り私は独り言のようにそう言った。
「友達の結婚式がここだったわ」
「まさか沢田絵里だとか」
「違うわよ」
「でも情報は手に入れた……」
「ふふふ」

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