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千一夜
第50章 第七夜 秘密の場所
 夜の八時を回ったとき、香坂と香坂の亭主が事務所のチャイムを鳴らした。
 私と咲子は、咲子が買ってきた弁当で夕食を済ました。もちろん香坂たちも食事は終えているはずだ。私が香坂夫妻のために食事(高額なものは除く)を用意したところで、公職選挙法違反に問われることはまずない。だが、咲子の父は私にこう言った。
「たとえ一円であっても貸し借りは絶対にするな。もし不正などしたら君を容赦なく地獄に落とす。咲子を泣かせるな。わかったな」
 法律書に書いてある言葉より、私には遠山高獅の言葉の方が重く響いてくる。「咲子を泣かせるな」父親が娘を思う気持ちに、私は気を引き締めた。
「四人の初会合に缶コーヒーって何だか侘しいわね」
 香坂が咲子がテーブルに置いた缶コーヒーを見てそう言った。香坂夫妻が並んでソファに座る。
「ごめんなさい」
「違うのよ。咲子さんのせいじゃないから」
 初めて香坂が私の妻を咲子と呼んだ。
「これが缶コーヒー四人分の領収証だ。悪いが後で二人分を置いてってくれ」
 私は香坂の前に領収証を置いた。
「世の中の政治家みんな長谷川だったらいいのにね」
「嫌みか?」
「長谷川、褒めてるんですけど」
「お前が言うと、嫌みにしか聞こえない」
「そりゃ悪うございました」
「ははは」
 香坂の亭主が笑った。
「ご主人、すみません。こいつとは入庁してから二十五年の付き合いになるんです。ついつい馴れ馴れしい言い方になってしまって」
「ははは、構いませんよ。俺も家内から長谷川さんのこと聞いてますから。役所で一人だけむかつくやつがいるって」
「むかつく?」
 咲子が驚いてそう言った。
「いやいや、奥さん違うんです。家内は自分より仕事ができる人間のことをむかつくって言うんですよ。それに長谷川さんは、上司からも部下からも慕われているから、こいつ長谷川さんに嫉妬してるんですよ」
「うるさいな、あんたは黙っててよ。私はまじで長谷川のことむかついているんです。何で私なんかを副市長にするのよ。私の人生設計が台無しよ。長谷川、責任を取りなさいよ」
「無理だな。だが一年に一度くらい、ご主人と一泊二日の旅行くらいできるだろ。近場だけど」
「近場って何なのよ。私が行きたいのハワイよハワイ!」
「何だか夫婦漫才みたいなんですけど」
 咲子がそう言った。
「確かに」
 香坂の亭主がそう言って笑った。
 
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